研究課題/領域番号 |
25380620
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
坂上 学 法政大学, 経営学部, 教授 (50264792)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 冪乗分布 / 財務データ / 解析手法 |
研究概要 |
初年度は、本課題の研究のためのインフラ作りと先行研究の文献を調査し、次年度以降の研究を進めるための基盤の整備をおこなった。まず、大量の財務会計データを収集する体制を整えることにし、24時間体制でインターネットを通じ、金融庁のEDINETや東京証券取引所のTDNetより、財務会計データのみならず、さまざまな適時開示情報を収集し、蓄積をおこなった。EDINETのデータは日々更新されるため、データの収集にあたっては専用のコンピュータを利用して常時更新を監視しながら、リアルタイムでデータの収集をおこなった。そのために必要なソフトウェアの導入もおこなった。このほか日経NEEDSデータなども合わせて収集し、なるべく多様で多くの財務会計データを、データ・サーバー上に蓄積していった。また、研究手法についてのテキストを収集し社会科学研究において採用されている基本的な解析手法の概要を把握すると同時に、国内外の学会における多くの研究報告を聞くことで最新研究における解析手法の動向について把握をおこなった。 続いて、昨年(2013年1月~2013年12月)のデータを用い、当期純利益、総資本、株主資本、売上高など主要な財務数値について、その分布がどのような形状をしているかについて、調査をおこなった。とりわけ当期純利益の分布については、当初の予想通り典型的な冪乗分布を観察することができた。この調査で新たに発見できたことは、階級を色々と変化させながら頻度分析をおこなった結果、全体をカバーする極めて階級値が大きなヒストグラムを作成した場合に観察される冪乗分布が、全体のわずか2%足らずにしかならない最貧値付近のデータ部分のみを抽出し、極小さな階級値でヒストグラムを作成した場合に観察される分布が同じく冪乗分布を示していることが判明し、強いフラクタル性(自己相似性)を確認できたことは大きな発見であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究のための基盤整備(財務データ収集体制の構築と基本文献収集)や国内外の学会参加による最新研究動向の把握については、当初の計画通りに進めることができた。本実績報告書を執筆している現時点においても、着実に日々の財務データの蓄積ができており、達成度としてはおおむね順調に進展していると評価することができる。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度の当期純利益データの分布特性において強いフラクタル性を確認できたことは、本研究課題において追求する方向性が間違っていないことを示す証左である。当初の計画通り、今年度においては財務データに対するフラクタル分析といった新たな解析手法の適用可能性について、地道に検証をしていくことにする。
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