第3年度(最終年度:平成27年度)には、初年度目および第2年度目に観察・調査した実務における諸問題を取り上げ、主として「コストビヘイビアが与える影響」、工程別総合原価計算、および「原価計算基準」の観点から検討した。 まず、日本原価計算研究学会の2015年度全国大会統一論題(日本大学商学部)においては、「原価計算基準」が、中西寅雄教授の所説に基づいて、どのような管理会計上のコンセプトに基づいて設定されたのかを明らかにした上で、今後の改訂へ向けて検討する方向性を示している。研究方法としては、理論的・定性的アプローチを採用した。 日本管理会計学会の2015年度年次大会(近畿大学)においては、原価計算研究の領域(とくに実証的・定量的アプローチ)で近年取り上げられているコストの下方硬直性と階層的線形モデルの有用性を取り上げた。定性的な文献研究に基づいて、今後の原価計算研究および管理会計研究における展開可能性と課題を提示している。 工程別総合原価計算については、理論的・定量的アプローチにより、FIFOによる累加法の特性をより詳細に検討し、明らかにしている。現場作業における原価管理や、仕掛品評価についても、大きな影響を与える可能性を提示した。 以上、平成27年度においては、種々のアプローチを併用することにより、製品原価計算論における理論的・実務的な利用方法と役割期待について、新たな視座を示すことができたと考えている。
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