本研究では、利益調整行動(報告利益管理)について、新規株式公開企業を対象に検証を行ってきた。いくつかの議論が行われたが、考えられた一つの仮説は、財務会計と管理会計の関係性に関するものである。すなわち、従来の利益調整行動の研究は、財務会計上の数値が公表され、その公表された情報を用いて行われてきており、その一歩前の点については、経営者の機会主義的行動のインセンティブに焦点が当てられてきた。経営者のインセンティブがあり、それが財務会計上の数値に反映されるというものである。これに対し、今回検討したのは、財務会計情報と管理会計情報との関連性である。近年では、セグメント情報の開示に関する会計基準を典型例として、もともとは企業内部の情報を外部報告用の会計情報に反映させようという動きが進んでいる。外部者には歓迎されるものである一方で、企業側からすれば、管理会計情報が外部に漏れるのを歓迎しない傾向も考えられる。このような抵抗感がある一方で、財務会計情報と管理会計情報がリンクしていくことは、企業内部における情報処理活動の効率化には役立っていると考えられる。つまり、抵抗感が新たな利益調整行動を生む可能性がある一方で、効率化等を目指して財務会計情報と管理会計情報の融合を進める企業があってもおかしくないのである。特に、新規株式公開企業のように、比較的体力がない企業にとってみれば、効率化は必要であろう。そこで、財務会計情報と管理会計情報の融合が、企業側でどのように受け止められているのかを検証した。これについては近日中に学会報告及び投稿を行う予定である。 次に、より直接的な研究としては、ストック・オプションの付与が経営者の機会主義的行動にどのような影響を及ぼすのかの検証を行っている。こちらについては、学会報告もすでに行っており、学会誌等への投稿を近日中に行う予定である。
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