研究実績の概要 |
これまでの研究においては、各国の上場企業の利益に対する税金の負担比率、すなわち実効税率について、定性的分析を実施した。具体的には、1999年度~2012年度の13年間の実効税率の実績及び法定実効税率の差額を日本(3,560社)、アメリカ(5,697社)、イギリス(1,296社)、ドイツ(612社)、フランス(600社)の上場企業の公表財務諸表から、国別・時系列的に分析した。諸外国の企業と比して、日本企業の実効税率は著しく高く、また、日本企業の実効税率は常に日本の法定実効税率を上回っていた。日本企業が、外国企業との競争において明らかに不利な状況にあり、また、日本企業の実効税率が法定実効税率を常に上回っているということは、その原因は、国の政策の問題ではなく、企業自らが税金のあり方について検討しなくてはならないと考えた。 本研究の目的は、現在の日本企業の利益に対する税金の負担比率、すなわち実効税率は諸外国の企業と比して著しく高いことから、すべての日本の上場企業の公表財務諸表から、実効税率の実績と法定実効税率の差を分析することであり、日本企業の実効税率が高いことの原因分析と検証を行い、日本企業のタックス・マネジメントの現状を明らかにした。 一方で、諸外国における過度のタックス・ヘイブンの利用は、課税逃れとの指摘もあり、スターバックス社やアップル社は議会で取り上げられる問題ともなっている。このような納税による社会貢献についても念頭に置き、上記検証結果を基に、今後の日本企業のあるべきタックス・マネジメントの手法を展望した。
|