本研究の目的は、19世紀以降の近代化の過程で、日本、中国、韓国に西洋諸外国の簿記知識が伝播した過程を明らかにすることにある。昨年度の研究成果を受け、平成27年度は留学生を介して中国、韓国で翻訳された日本語による西洋簿記の印刷教本の特徴や、その形成過程に焦点を当て研究を進めた。 日本は中国や韓国に比べ早い段階で、日本語で書かれた西洋簿記の印刷教本が多数出版され、教育課程に取り入れられている。これは、単なる西洋簿記書の日本語訳を行うのではなく、当時の日本人に分かり易く解説するような種々の工夫がなされていたこと、また教育を通して先の教示内容の改良・改善が行われていたことが指摘できる。このような取り組みにより、日本語で教示された西洋簿記の知識は「日本式西洋簿記」と言っても過言ではないほど、日本の慣習や制度と取り入れられ、知識の「現地化」が印刷教本上で行われていたことが明らかになった。
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