研究課題/領域番号 |
25380635
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
三輪 哲 東北大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (20401268)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 社会階層 / 社会移動 / 高等教育 / 計量分析 |
研究概要 |
研究課題の1年目にあたる平成25年度には、研究の構想および分析案を打ち合わせするための会合と、研究協力者たちのトレーニングを中心として活動した。トレーニングの成果は、計量的分析手法に関する書籍となり、現在刊行が待たれている。 また、既存データの二次分析による実証研究も着実に進められた。その成果は、2013年8月の第60回東北社会学会(仙台)にておこなわれた口頭報告や、2014年2月のThe 12th Asia Pacific Sociological Association Conference(タイ・チェンマイ)での口頭報告にあらわれたといえる。 具体的には、世代間社会移動と高学歴化との関係について、戦後日本の経験から実証的考察をおこなった。数次にわたるSSM(社会階層と社会移動)調査データの分析結果から、日本の教育拡大と移動機会格差の安定性の背景構造について議論された。需要主導により日本の高等教育が私立セクターを中心に発展したことで、大きな教育拡大が急速に達成されたことは確かである。だがそれは、「教育拡大したにも関わらず、世代間移動機会が平等化しない」という、欧州諸国の経験とは異なる事態を引き起こす遠因ともなった可能性が示された。 さらには、日本の高等教育からの中途退学について、予備的な知見が提示された。これまで、日本における高等教育からの中退は、社会階層的要因とは無関連とされていた。しかしながら、公開されている全国調査データの分析により、母親側の階層要因の影響が示唆される結果が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度ということで、研究成果はそれほど多くなかったが、基盤となる研究協力者の育成と、連携研究者との調整はできた。信頼に足る公開データをいくつか発見し、アクセスすることも進められた。国内の学会報告1回と、国際学会での報告が1回と、制約がある中でも着実に成果を積み重ねていった。これらにより、ほぼ計画通りに進行しつつあるとの自己評価に至った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、二次分析による国際比較研究を押し進めることを中心に据える。初年度に発見された日本での経験的知見は、果たして、一般性を持ちうるのかどうか、大規模な国際比較統合データセットによりさらなる検証をする必要がある。さらには、これまでにあまり着手できていない階層意識およぼその近縁の側面に関しても、客観的な階層移動研究とリンクさせるべく、研究を展開する。 それらの比較分析をする際の枠組みとして、福祉国家レジーム論や高等教育制度などといった、制度および政策レベルの特徴を整理して用いることを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度の研究を効率的に推進したため発生したものである。 平成26年度請求額とあわせ、平成26年度の研究遂行に使用する予定である。
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