研究課題
社会的資源の配分をめぐる階層格差とそれへの意識に対して、ミクロ的なプロセスとマクロ的な制度のインパクトとがいかにして絡み合い影響するか、実証的研究を進めてきた。経済的資源保有の絶対的格差と相対的格差について、日本ではジェンダー格差が大きいが、その一部は家族政策の消極性によると、国際比較分析により裏付けられた。親子間での地位の移り変わりである世代間移動に着目すると、政策・制度による違いよりも、産業化の離陸時期とそれに伴う国際分業体制における位置が、移動パターンを特徴付ける様相がみてとれた。これらは、マクロ的変数を集約した(国・地域を単位とした)国際比較マクロデータファイルと、SSMやISSPといった比較を念頭におき調査設計された大規模ミクロデータファイルとを統合し、それへとマルチレベルモデリングのような階層的データを扱うのに適した先端手法の適用によって産まれえた研究成果といえる。階層意識の一種というべき「将来の地位志向性」にかんしては、父親ではなく、母親の就業ならびに職業階層の効果が析出された。さらに、教育意識の行動レベルのあらわれとしての「子どもへの教育的関わり」についても、同様に母親就業状態の効果がみられた。これらはいずれも、母親が無職(専業主婦)のときに最も大きな正の値をとるものであるから、あえて専業主婦を選択すること自体の階層論的な意味へと問い直す傍証となりうる。階層構造全体から局所へと視点をシフトすると、高度専門職のなかでのキャリア移動のジェンダー格差や、旧中間的階層出身にみられる高等教育中退の多さなど、解消へと向かっていない機会格差問題の所在が浮かび上がった。今後は、上昇移動の閉鎖化に加えて、下降移動の過程とその意味へと迫る必要性がある。
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Annual Bulletin, Graduate School of Education, Tohoku University
巻: 1 ページ: 1-18
社会と調査
巻: 14 ページ: 56-57