研究課題/領域番号 |
25380642
|
研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
嶋根 克己 専修大学, 人間科学部, 教授 (20235633)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 葬送儀礼 / ベトナム / 近代化 / 社会関係資本 / 死の社会学 / 東南アジア |
研究実績の概要 |
本研究の目的は近代化によって葬儀がいかに変容したかを、すでに一定の変容を経験している日本のそれと、現在急速な変容をこうむっているベトナムのそれを比較することで、背後で作用している変動要因を探り当てることにある。 昨年度は4度合計3週間程度のベトナム滞在の機会を作りながら、現地調査ならびに現地関係者への聞き取り調査を進めた。特に2014年3月から4月にかけての調査では、ベトナム北部地域と南部地域の各農村にそれぞれ数日ずつ宿泊滞在し、関係者への聞き取り調査が可能になった。その結果、ベトナム国内においても地域や民族によって葬送儀礼や宗教観念に大きな隔たりがあることが判明した。 専修大学社会関係資本研究センターが実施した東南アジア緒国に対する国際比較調査(報告者はベトナム地域担当)において、一人当たりGDPと近隣社会への葬儀の参加率が負の相関を示すことが明らかになった。この調査データを下に7月のISA、ならびに11月のANPOR国際シンポジウムにおいて英語で研究成果を報告し反響を得た。その他、ソウル国立大学アジアセンター、北京外国語大学日本学研究中心などにおいても同様の材料で研究報告を行っている。これらの知見はベトナム社会において実際に行われた葬送儀礼の事例研究と共に“Funeral Ceremony as an Embedded Social Capital”として専修大学社会科学研究所月報No.613に掲載した。 これまでの知見によって、ベトナム北部の葬送儀礼の源流は中国であることが判明している。中国の大都市においては文化大革命後に葬儀の簡素化・近代化・脱宗教化が急速に進行した。中国の葬儀の近代化を観察することはベトナムの葬儀の将来を考察する上で有用な知見をもたらすはずである。2015年3月に一ヶ月北京に滞在しながら北京市民の葬儀についての知見を得ることが出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の研究計画では、2013年度、2014年度を主要な研究期間にあて、2015年度には海外への研究成果の発信に当てる予定であった。しかし上記の英文研究論文に加え、2014年にはXVIII ISA World Congress of Sociology、2014 ANPOR Conference、さらにはソウル大学アジアセンターで英語での研究報告を行う機会を得た。またイギリスUniversity of Bath, Centre for Death & Society 所長のTony Walter教授との研究協力も行うことができ、フランス最大の葬儀会社広報担当ディレクターのChristian de Cacqueray氏にたいして日本の葬送儀礼についての紹介を行うことが出来た。また中国に長期滞在しながら、中国の葬送儀礼慣習についての研究を進めることができたのも幸運であった。以上のとおり、当初の計画以上に昨年度の研究は順調に達成されていると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
葬儀の近代化の指標としてGDPと葬儀内容の変化についての国際比較調査を継続する。現在報告者が所属している専修大学ソーシャル・ウェルビーイング研究センターでは以前のプロジェクトを継承して東アジア各国での大量観察調査を実施している。2014年度には日本での実査が終了し、2015年度は韓国(ソウル国立大学アジアセンター)、ベトナム(ベトナム社会科学院)での調査が進行中である。このような調査研究のデータが蓄積していけば、アジア地域における葬儀の近代化についての検証はより精確に行われるはずである。このテーマに関して8月に開催されるISTR Asia Pacific Regional Conferenceで研究報告を行う予定である。またイギリスないしはフランスにおいて研究報告めざして現在先方との予定を調整中である。また現在『続死の社会学(仮)』(副田義也監修、編)を2015年度中に出版する計画で原稿の執筆並びに編纂作業を推進している。このような研究成果のとりまとめを行うべく、研究報告、追加調査のための海外渡航、資料収集、専門的情報所持者への聞き取りを重ねていく予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
年度内多忙のため小規模な海外調査を実施することができなかったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
報告書の取りまとめに必要なプリンタを購入の予定である。
|