本研究の目的は、近代化によって葬儀がいかに変容したかを、すでに一定の段階に達している日本のそれと、現代急速な変容を被っているベトナムのそれを比較することで、背後で作用している要因を探り当てることである。 ベトナム社会における葬儀や埋葬の変化については、第一年度、第二年度の現地調査においておおむねの情報を収集することができた。特に北部農村においては一定の伝統的な様式を残しているものの、都市への出稼ぎ労働者や移住者の増加により、村落的な関係にも変化が表れていることが理解できた。そこで今年度はベトナム社会科学院のDang Thi Viet Phuong氏のThe Collective Life; The Sociology of Voluntary Association in North Vietnamese Rural Areas などによってベトナム農村社会の変容について研究した。 また日本、ベトナムの葬儀の比較だけでなく、近代化と葬儀の変動について広く情報を収集するために、年度初頭には中国・北京の清明節(死者を追悼する日)の実態を調査した。さらに8月に別な研究プロジェクトで訪問したアフリカ・ウガンダにおいてある青年の葬儀に参加することができた。これは近代化・商品化があまり進んでいない葬儀の事例として極めて重要であると考え、5か月後に家族に葬儀の内容についての追加調査をおこなった。 また専修大学社会知性開発センター・ソーシャルウェルビーイング研究センターが実施した国際比較調査の企画運営に参加して、東アジア各国における葬儀への参加動向について検討した。この研究調査では、GDPと近隣住民の葬儀の参加率には強い負の相関がみられ、これまでの作業仮説を裏付けるものとなっている。 これまでに収集したインタビュー記録や写真などはデジタルデータ・アーカイブとして外部記憶装置において厳重に保存している。
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