研究課題/領域番号 |
25380653
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
安田 尚 福島大学, 行政政策学類, その他 (30157995)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 原発問題 / 安全神話 / 朝日新聞 / 読売新聞 |
研究実績の概要 |
朝日新聞と読売新聞の「原発問題」に対する論調を比較検討する。全体として言えば、読売は終始一貫「原発」推進派であり先導者であった。これに対して朝日は、原子力開発に対してしばしばその拙速を批判するものの、容認派であったが、1979年3月の「スリーマイル島原発事故」を契機として「YES-BUT」体制(条件付き容認)へ、1999年の東海村の「臨界事故」で「原発増設の凍結」を打ち出し、2011年3月の「東電福島第一原発事故」によって「原発ゼロ」に転換する。その意味で、読売は一貫した原発推進の「急先鋒」であったし、朝日は動揺する「容認派」であった。 初期の導入時においては、多少のニュアンスの違いはあるものの、両紙はともに原発推進の立場である。1979年の「スリーマイル島事故」に対して、読売は「米の原発事故、安全論争に火 日本も念には念を入れて」(読売1979年3月30日)と、原発の是非は論ぜず「今一度総点検して欲しい」と要望するのみであった。朝日は、この事故を重視したが「原発廃止」論には至らず、4月8日社説では露原発が「事故を過小評価」したことに問題ありとする。同年朝日は「社論を『イエス・バット』とすることを論説主幹岸田純之介が提起。 さらに1986年4月の「ロシア・チェルノブイリ原発事故」に対して、読売は原発に対する態度を変えることはなかった。社説(1987年10月22日)は日本が「エネルギー資源に乏しい国」であるから原子力エネルギーに依存せざるを得ないとしている。朝日は、社説(1986年8月17日)で、「人為的ミス」原因説を重視し「わが国でも運転員や保守要員の知識と技量の向上」に取り組むべきと指摘している。むしろ、日本の原発施設とロシアの違いが強調され「日本では起こりえない」という「スリーマイル島事故」以来の教訓が引き出され、さらに「安全神話」が補強される結果となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
読売新聞と朝日新聞の原発問題に関する記事、1971年から2011年までを両紙のデータベースからスクラップし検討を加えた。その結果、多少のニュアンスの違いはあるものの、両紙はともに「原子力の平和利用」を歓迎し、原発に対して「推進派」と「容認派」であり、「安全神話」形成に貢献したと言える。しかし、朝日は度重なる「原発事故」から次第に「原発増設反対」、「原発廃止」へと態度を変えていることが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
フランスの新聞の原発に対する論調を調査し、日本の地方紙と大手紙と比較検討したい。仏紙ルモンドは、いわゆるフランスのクオリティー・ペーパーと評される新聞であるが、この新聞は2011年の福島第一原発の事故に際し、いち早く「30年後までに仏原発を廃止」せよと提起するなど、積極的に原発政策を論じている。フランスのメディアはいかなる背景からこうした結論に達したのかを、取材体制やスタッフの構成などを現地調査することで明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定よりも低い金額で消耗品や旅費が使用できたため。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品の購入に充てる予定である。
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