研究課題/領域番号 |
25380657
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
北田 暁大 東京大学, 大学院情報学環, 准教授 (10313066)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | サブカルチャー / グローバリゼーション / ドイツ |
研究概要 |
本年度は、翌年におけるウェブ調査のために、 (1)現在のドイツにおける日本文化(サブカルチャー)受容について、現地にて、書籍、論文などを渉猟し、現下のドイツ都市部におけるサブカルチャー受容および、その研究にいて精査すると同時に、(2)日本サブカルチャーを愛好するドイツの若者に対してインタビュー調査を行った。(3)また、ライプツィヒ・メッセの「日本サブカルチャー」の展示場に足を運び、同人誌を発行している現地の若者にインタビューするとともに、そこで販売されている同人誌等を購入し、精査した。 (1)によって、現下問題となっているドイツにおけるサブカルチャー受容の実態・研究動向を把握し、翌年度の本調査の質問項目設定の素案を作成した。この際、科研費申請書類にも記した文化研究者ファビアン・シェーファー教授(エアランゲン大学)とたびたび議論を交わし、ドイツにおける「日本文化」受容の問題点と特質について考察した。さらに、ベルリンフンボルト大学日本学科のハラルド・ザロモン氏、ベルリン森鴎外記念館のベアーテ・ヴォンデ氏と将来的な研究協力について意見交換をかわした。 (2)については、ライプツィヒ在住のドイツ人、在独中国人へのインタビュー調査を行い、「オタク」的な日本文化がどのような形でドイツで受容され、概念化されているについて詳細な情報を得た。次年度もこうしたインタビュー調査を広げていき、ドイツにおける日本サブカルチャーの位置価についての考察を深めることとしたい。 (3)もまた(2)と同様に、次年度のウェブ調査の精度を高めるために重要な準備作業であった。日本のサブカルチャーに影響を受けた同人誌著者や、コスプレを行うドイツ人にインタビューを行い、日本サブカルチャーの受容の実態について考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の目的は、翌年度の計量的なウェブ調査の質問項目設計、貯砂設計のための準備作業であった。実際に、ドイツにおける日本サブカルチャーの受容は、日本におけるそれと同等に考えるわけにはいかず、出版・流通・情報技術などが複合的に絡み合っており、その受容形態も日本におけるサブカルチャーコミュニティとはだいぶ異なる様相を呈していることが判明した。またアメリカにおける日本サブカルチャーの受容研究が記述しているのとは異なる、ドイツにおける需要の特質性についても熟考することがてきた。 「オタク」という概念にしても、日本におけるそれとは異なる使用をされており、日本において実施したアンケート調査をそのまま踏襲することは困難であり、もろもろ再考する余地があること、その再考すべき点の内実について考察することができた。 また、ベルリンやライプツィヒの書店における日本サブカルチャーのコーナーの配置について情報を得ることもでき、流通形式、頒布様式、受容共同体などついてメディア論的に考察するという新しい課題も見出すことができた。 なによりも今年度の目的は、以前若手研究で行った日本での若者文化についての研究と比較可能なドイツでの調査設計を構想することであった。申請前にある程度あきらかにしていたものではあるが、今年度のインタンシブな調査によって、さらに輪郭が明確かつ繊細になったといえことができるだろう。 総じて、当初の計画に掲げた課題以上の研究成果を得ることができたといえるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の目的はなにより、次年度のウェブ調査のための準備作業を行うことであったが、実際にインタビュー調査、文献調査などを行う過程で新しい課題も少なからず見つかった。ドイツにおいては、たとえば、ポピュラー音楽などについては英米の影響が大きく、またドイツ人自身が「英語」を文化受容において非常に重要なものと考えている一方で、マンガ・アニメなどついては、日本の文化的影響がきわめて大きいことがうかがわれた。いわば、音楽や小説などの趣味受容と、アニメ・マンガなどの趣味受容が、こちなる水準において受け止められているのである。グローバリゼーションの環境において、いわゆる「サブカルチャー」が分野により、どのように異なって受容されているのか、その原因は何か、旧東独、西独などでそういった点に違いがあるのか、など本研究が照準を定めてきた問題系について、ある程度明確な輪郭を与えられたと思える。また、インタビューなどを通じて、あらためて文化受容と「歴史認識」との関係性の密接さを痛感することとなった。この点についても、研究課題の一つとしてさらに深く感が手行くこととしたい。 現在すでに、今後のウェブ調査の質問紙設計について準備作業を進めているが、年齢層、地域差など、どのように操作的に設計していくかについて、ウェブ調査についての先行研究などを参考にしながら、検討している段階である。秋までの調査実施を視野に入れ、ドイツ人協力者と連携をとりながら、作業を進めているところである。
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