研究課題/領域番号 |
25380664
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
山崎 仁朗 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (40262828)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 市民団体 / 地域協議会 / 地域自治区 / 地域自治 / コミュニティの制度化 / ドイツ / 自治体内分権 |
研究概要 |
2013(平成25)年度は,①ドイツの市民団体Buergerverein(BV)についての研究,②ドイツの地域協議会Stadtteilvertretung(SV)についての研究,③日本の地域自治区についての研究,④地域自治にかんする基礎的な理論研究におもに取り組んだ.①については,補充調査の結果もふまえて「ニュルンベルク市の市民団体について」という論文にまとめたが,これは,BVにかんする,おそらくは初めてのモノグラフという点で意味があり,日本でも以前から紹介されてきたSVを相対化する意味でも重要性をもつ.また,BVが政治団体としても機能しているホルガウ村の調査もおこなった.②については,インゴルシュタット市の実証研究をおこなった.同市のSVは,日本の一括交付金に似た「市民予算」についても審議しており,日本の地域協議会との比較という点で興味深い.③については,『地域自治の最前線』という共著を刊行した.地域自治区についての,おそらくは初めての本格的なモノグラフである.刊行後も,上越市における「検証会議」への参加などをつうじて,観察を続けている.④については,コミュニティについての制度的・政策論的アプローチを批判する論者がR. M. MacIverのコミュニティ論に依拠していることをふまえ,M. WeberのゲマインデGemeinde論を手がかりに,これを批判的に検討した.その際,R. Koenigのゲマインデ論の意義と限界についても,あわせて検討した.この研究は,基礎自治体(市町村)の下位区分という意味での地域コミュニティを,結社Verein(あるいはassociation)ではなくアンシュタルトAnstaltとして捉える視座の構築という意味で,従来のコミュニティ研究の一面的な見方を乗り越え,町内会=自治体論を自治体内分権論へと発展させるという点で意義をもつ.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の初年度として,おおむね目的は達成できたと思う.なによりも,「ニュルンベルク市のBVについて」論文にまとめることができたことが大きく,くわえてホルガウ村という興味深い対象を発見し,BVについての知見を豊かにすることができた.『地域自治の最前線』の刊行も大きな成果であり,これをふまえてつぎのステップ(後述)を見通すことができた.理論研究についても本格的に着手できた.課題としては,SVについての網羅的なデータの整理がまだできていないことが挙げられる.
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今後の研究の推進方策 |
2014(平成26)年度は,①SVについての網羅的なデータ整理を進め,エアフルト市やインゴルシュタット市などで事例研究を続けたい.②また,ゲマインデの「連合体」についての調査もハルプシュテット市とディンゲルシュテット市をフィールドとしておこないたい.③日本の地域自治区にかんする研究については,連携研究者とともに「地域自治区研究プロジェクト」を組織し,分担して事例研究をおこないたい.④理論面での研究についても継続していきたい.なお,事例研究については,研究の進展のなかで,場合によってはフィールドを変更する必要が出てくるかもしれないが,その際は,可能な範囲内で対応することとする.
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次年度の研究費の使用計画 |
おもな理由としては,①連携研究者が集まる研究会の頻度が,当初の想定よりも少なかったことと,②日本の地域自治区にかんする実態調査について,上越市以外には着手できなかったことが挙げられる. そこで,2014年度は,研究会の頻度を増やし,上越市以外の地域自治区についても,連携研究者らと分担して事例研究をおこなう予定である.また,すでに述べたように,ドイツの各地で(おそらくは複数回の出張により)事例研究を進める予定である.
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