二つのユニオンの活動を調査した。両方のユニオンに共通する点は、勤め先には労働組合がなかったり、ある場合にも企業内組合であったりするために、組合は解雇された労働者を守ってくれないことである。解雇された労働者たちは、会社外のユニオンに助けを借りて、会社に対して解雇撤回を要求していた。しかし、解雇された人の中には、うつ病を患ったり、勤務先に嫌気がさしたりする人も少なくなく、闘争が長引くと、ほとんどのケースは、会社と和解して退職していた。このようなケースの問題点は、いくらか好条件を引き出せたとしても、職場環境は変わらないことである。うつ病、パワハラ、偽装請負、多重派遣などの問題を職場が抱えているが、結局のところ、「不平不満」をいう者が切り捨てられ、職場はそのままの状態を維持することになる。 しかし、一つの事例に関しては興味深い点があった、大企業で働いた経験がある者が中心的に活動し、その人が、特定の会社の情報やそこでの闘い方を蓄積し、そして職場改善の結果を後ほど問いただしていていた。そのような人がいることによって、特定の会社を定点観測し続けることが可能であり、組織の外からではあるが、職場環境に対して一定の影響力を行使することができるのである。言うなれば、労働組合版のコンサルタントということになろう。 働く当事者からすれば、とりわけ非正規労働者の場合は、会社と闘い続けてまで居残りたいという人は少ない。しかし、ユニオンや労働関連のNPOなどで活動する人が同じ会社に「コミット」し続けることは可能であり、組織のウチとソトとを媒介する人が一定数存在し、特定の会社の内実を公開したり、同じ会社に対して他の人が闘う際に参考にしたりすることによって、働く場は変わりうるのである。
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