研究課題/領域番号 |
25380669
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
田中 重好 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (50155131)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 防災対策 / 防災パラダイム / 津波避難 / 公助・共助・自助 |
研究概要 |
これまでの日本の防災対策・政策の歴史を検討し、そこから防災パラダイムをという形で、防災対策の基本的な考え方を整理した。その従来の防災パラダイムとは、基本的には「災害は制御可能である」という考え方に基づき、科学によって将来の災害を予知できるという科学主義、さらに、その科学主義から導出される災害対策を中央集権的に政府が推進するという中央集権的な行政主義という、日本の柱から構成されてきた。 こうした従来の防災パラダイムが、東日本大震災時の被害構造に照らすと、さまざまな問題点を露呈した。 ここで東日本大震災の被害構造とは、おもに、津波からの避難行動を、地域的に検討すること、および、小中学校での避難行動を検討した結果から明らかにされたものである。 津波の避難行動の地域的な検討とは、まず、岩手県、宮城県の市町村ごとの物的な被害と人的な被害との検討を前提として、さらに、両県のなかから山元町、亘理町、岩沼市、東松島市、気仙沼市を選びだし、集落単位での物的被害と人的被害を検討した。その結果、物的被害が大きかったにもかかわらず、人的被害が小さかった地域での避難行動の特徴を明らかにした。同時に、両県の津波による使用不能となった小学校について、被害と人的被害、避難行動を検討した。 こうした津波の避難行動を中心とした検討から、津波警報の発令→警報伝達→避難勧告・避難指示という従来型の防災対策では不十分であり、各地域や各学校での意思決定が重要な働きをしていたことを示した。 こうした検討から、従来の防災パラダイムの限界と、今後、「新たな防災の基本的な考え方である防災パラダイム」を構築する必要を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの日本の防災対策の歴史的な検討が順調に進んでいる。さらに、広域的に災害の被害とその対応(とくに津波の避難行動)についての全体像が整理できた。こうした調査に基づいて、では、なぜ東日本大震災において、このような大量の死亡者が発生したのか、その原因は何かの考察に進んでいる。その考察を、一つは「想定」をキーワードにして、従来の防災対策の基本的な考え方にさかのぼって検討してきた。もう一方は、実際の避難行動を詳細に検討することを通して、検討してきた。
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今後の研究の推進方策 |
発災から3年以上を経過し、社会学を中心とした東日本大震災の調査に基づく研究成果が続々と発表されてきた。こうした研究成果を全体として検討しながら、本研究の研究成果に生かしてゆく。 現地調査としては、特に、気仙沼市を中心に、発災当時の具体的な避難行動を詳細に調査検討する。 こうした検討とともに、戦後日本の防災対策の歴史をまとめ、従来の防災パラダイムから新しい防災パラダイムへの転換の方向性を示す。
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次年度の研究費の使用計画 |
災害における被害者への調査は、被調査者への配慮が必要となる。災害から2年を経過しているといえ、いまだ家族、親族、近隣の人々が災害の犠牲者となったことを受け入れられずに苦しんでいる人もすくないない。さらに、自治体職員の仕事忙しくなり、調査対応する時間的余裕も取れなかった。 こうした点を配慮しながら調査を進めているために、こちらの調査計画だけで調査を進めることが、しばしば困難となっているために、調査計画が遅れてきた。 東日本大震災から3年を経過し、被災者の生活や精神的な状況も落ち着きを見せている。そのため、今年度は、これまで予定していたインタビュー調査のできなかった部分も、本年度は進めてゆく。
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