防災対策はもっとも「公共性の高い」課題である。戦後日本の防災対策を検討して、どういった形の「公共性」が防災対策や防災計画になかで形成されてきたのかを明らかにした。 そのために、1959年に成立した災害対策基本法の成立から現在までの法案の修正過程を検討した。災害対策基本法で導入された防災計画については、防災計画は、基本的に、中央政府と災害関係の専門家によって基本方針が作成され、それを元に、地方政府や防災関係機関が防災計画を作成し、防災対策を実施している。さらに、災害対策関連法として1978年の大規模災害特別措置法など、災害対策基本法以降に制定された諸法を検討した。それに並行して、実際の災害対策がどう実施されてきたのかを、地震予知の取組み、耐震化の取組み、津波対策の取組みなどを、時系列的に検討した。 こうした検討から、日本の防災対策には、行政の集権的分散システム(神野直彦)のもと、「官」(中央政府)が政策の企画、財政を統括している「官の公共性」が貫かれていることを明らかにした。たしかに、近年、都道府県レベルを中心とした復興基金の創設とそれを活用しての「柔軟な(政府の手の届かない)災害対応・復興」が行なわれ、災害ボランティアの活動も活発となり、各地のコミュニティレベルでの防災への取組みが活発化しているものの、「官の公共性」を基本軸とした防災対策という構造は揺るぎがない。 これは、日本の従来の「官による公共性」である。この「官の公共性」が「住民の共同性」とがミスマッチを起こしていることに、現在の防災対策の問題点がある.
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