研究課題/領域番号 |
25380679
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
喜多 加実代 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30272743)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 刑事法学 |
研究概要 |
本研究は、精神保健福祉法(及びそれ以前の精神保健法・精神衛生法)や心神喪失者等医療観察法(及び触法精神障害者について議論された保安処分案)の成立過程でなされた議論について、課題や問題設定の変遷を考察することを目的とするものである。その考察に際して、M.フーコーやI.ハッキングの研究が有用であると考えており、彼らの研究の特性を再検討することも合わせて行うこととしている。 2013年度は、ハッキングの著作に関するシンポジウムや、社会構築主義とハッキングの論考から、このフーコーやハッキングの研究視座に関する検討を中心に行うことになった。そこではとりわけ、ハッキングの類(kind)に関する議論をフーコーの言説分析や、エスノメソドロジストの一人サックスのカテゴリーに関する論考と重ね合わせつつ、科学社会学、知識社会学、科学論哲学に対する有用性が指摘されていた。それは時代によって問題領域や近接カテゴリーとの関連を異にし、異なる課題を設定させることを示そうとする本研究の方法としての妥当性を確認させてくれるものであった。 計画では、1980年代の精神病院不詳事件と、それを契機とする精神衛生法から精神保健法改正に関する議論や、日弁連の「精神医療の抜本的改善について(要綱案)」とそれに対する精神医療従事者や精神障害者の反論を主に検討する予定であったが、やや実施が遅れている状況である。メディアで広く問題化されたのみならず、国際的にも問題化した一方、1970年代の病院不詳事件と比較すると、精神医療全般に関わる課題として共有されたというより、問題がある特殊な病院での事件とされる傾向が指摘できそうであるので、その点を確認しながら2014年度の計画とつなげる予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究の視座の検討に当初の想定以上に時間を費やしたためと、学内の図書館改修工事により、文献収集を十分に行うことができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
1980年代後半からのインフォームド・コンセント等の(精神疾患)患者の権利に関する議論及び1990年代の「処遇困難者専門病棟」新設についての賛否の議論について考察する予定である。特に、①権利を主張できる患者あるいは同意権を保障されるべき患者と、そのようなことが無理であったり困難である患者とどのように差別化されていくことになるのか、②権利の主張が、犯罪行為の責任を担う議論とどのように結びついているのかあるいは結びついていないのか、に焦点を当てて検討する。 ただ、2013年度の計画がまだ完遂していないこともあるので、これについても平行して進めて総合的に把握することを目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の視座の検討に当初の想定以上に時間を費やしたためと、学内の図書館改修工事により、文献収集を十分に行うことができなかったため、文献収集のために予定していた費用に未使用額が生じた。 2013年度に十分に行えなかった文献収集を行う予定である。ただし、図書館完成に伴う引越期間があり使用には若干懸念が残るため、方法論の検討や当該研究の検証のための研究会への参加機会を増やす予定である。
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