研究課題/領域番号 |
25380679
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研究機関 | 福岡教育大学 |
研究代表者 |
喜多 加実代 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (30272743)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 医療・福祉 / 刑事法学 / 人権 |
研究実績の概要 |
精神医療に関連する、精神保健福祉法(とそれ以前の精神衛生法)や心神喪失者等医療観察法(及び触法精神障害者について議論された保安処分案)の成立過程でなされた議論や評価を検討し、精神障害者や触法精神障害者の処遇についての課題や問題設定の変遷を考察することが研究全体の目的である。 平成26年度は、(1)1990年代以降のインフォームド・コンセント等の(精神疾患)患者の権利に関する議論と、(2)1990年代の「処遇困難者専門病棟」新設についての賛否を検討した。(1)1970年代前半に「インフォームド・コンセント」は専門誌で取り上げられていたものの、精神障害者へのインフォームド・コンセントは懐疑的に受け止められたり、現実的な提案と想定されていなかった感がある。しかしながら、1990年に入ると、医療全般でインフォームド・コンセントが議論されるのと同様の趨勢で、この話題を扱った論文が算出され、またシンポジウムなども組まれるようになっていることが確認された。(2)については、既に中山研一、中谷陽二らの研究が指摘するように、「処遇困難」とされる対象の多様性が特に処遇困難者専門病棟設置に批判的な論者から述べられ、また、保安処分への反対論と同様、従来の精神医療の人員・財政的不足が患者を処遇困難な状態に置いている可能性が言及されたことが確認できた。ただ、保安処分導入反対論の代表とも言える中山宏太郎が同施設を推進したことについては、更に考察が必要である。 こうした検討と平行して、心神喪失者医療観察法の実施状況に関する課題や評価について、近年の議論も整理を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
25年度~26年度に学内図書館の改修工事とそれに伴う図書館の引越業務等があり、そのスケジュールに合わせて集中して作業をすることが難しい状況があった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、(1)インフォームド・コンセントを典型とする、患者の権利や精神障害者の権利の主張が、果たして、心神喪失者等医療観察法導入時に盛んに言及された患者の掲示責任の主張と結びつけられて論じられることがあったか、を検討する。(2)1960年代には、処遇が困難で累犯が多いとされる「精神病質者」が保安処分の対象として議論された経緯があった。その時点の問題意識と1990年代の処遇困難についての問題意識は、どのように類似し、どのように異なるのか、特に26年度からの検討課題として残った、中山宏太郎の見解を掘り下げつつ考察を深めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
特に平成25年度に、先に述べた図書館改修工事との関係で、図書費や文献複写費を予定通りに使用することに困難が生じた。また平成26年度は、研究分担者となっている科研費で出張することが多くなり、やや旅費として想定した分の支出が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
文献複写費や整理のための物品費、図書費については、これまで予定通り支出できなかった分も含めて使用し、また学会・研究会等も平成25年度、26年度より現時点で多く想定されることから、旅費も増える予定である。
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