本研究は,都市地域(Urban Area)を示す基礎統計単位を設定することを目的とする.従来日本では都市地域を示す統計単位として「人口集中地区(DID: Densely Inhabited Distrist」が設定されてきた.しかしながら,これは国勢調査のたびに設定され,通時的な分析が困難であったり,必ずしも一円としての都市地域を示すものではないという意味で,都市の趨勢や活力をとらえるために,一般的に用いるには不便な点の多いものあった.そこで,本研究では近年急激に整備が進んでいる地域メッシュデータを用いて,都市分析のための基礎統計単位を設定しようとしたのである. 作業は1㎞メッシュにまとめられた国勢調査の人口データを用いて,人口量(=人口密度)に一定の基準値を設定し,この基準値を上回る地域をメッシュ単位に統合するという方法で行った.結果として,従来の人口集中地区にほぼ相当する都市地域の設定に成功した.とりあえず2010年の国勢調査データにもとづく都市地域を設定し,これを「メッシュデータにもとづく2010年時点での都市地域」という意味での「mdbUA2010: meshed data based Urban Area 2010」と名づけることにした.なお,現時点では太平洋ベルト地帯を中心とした地域で,以下の19の都市地域を設定することに成功した.今後,全国すべての都市地域の設定を進めていきたいと考えている. 東京,大阪,名古屋,福岡,広島,岡山,倉敷,京都,奈良,豊田,安城刈谷知立,豊橋,岡崎,浜松,北九州,福山,和歌山,金沢,福井 また,これらの基礎統計単位の設定にもとづいて,三大都市圏における競争力の比較分析や,90年代以降におけるこれら19の都市の全体的な趨勢分析などを試みることができた.
|