第3回全国家族調査(NFRJ08)のデータをもとに、第1回調査(NFRJ98)、第2回調査(NFRJ03)データを併用しながら、家族研究者が共同研究を行った。研究の目的は2000年前後の日本の家族の構造、変化を計量的に分析することであり、その成果を書籍として刊行することである。日本を代表する家族研究者が30名以上参集し、定期的な研究会を実施したうえで、論文化・書籍化をめざした。 最終的には28人の研究者が21本の論文を執筆し、2015年10月に原稿の入稿を終えた。書籍は2016年5月中に東京大学出版会から刊行される予定である(稲葉昭英・保田時男・田渕六郎・田中重人編『日本の家族 1999-2009:全国家族調査(NFRJ)による計量社会学』予価5400円)。現在校正中で間もなく出版されるが、出版後もこの本を対象とした書評セッションなどを企画している。 21本の論文から総合すると、この期間中に配偶関係を持たない人が中年層・高齢層を中心に増加し、全般的には定位家族への依存性が強まっていること、夫婦関係をもつ家族については結婚満足度や家事参加パターンなどは大きく変化していないことなどが観察された。定位家族への依存は育児期の女性の就労などのパターンにも強く観察され、私たちにとって家族のもつ意味が依然として大きいこと、私たちの社会が依然として家族に大きく依存しており、家族関係を有しないことはライフコース上の大きな不利を帰結することを物語っている。こうした意味でいわれているほど家族の変化は大きくないが、未婚化や離婚を中心として配偶者を持たない人が増加している。 同時に、親子・きょうだいなどの家族関係が女性中心に形成されること、このために女性が存在しない場合に家族関係が希薄になること、今後の家族問題はこうした女性のきょうだい・配偶者・親子関係をもたない男性に発生することが予想された。
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