2015年度の研究は、2014年度までの研究結果を受け、ベックやギデンズなどの再帰的近代化をキーワードとする第2の近代化における社会的な課題解決のプロセス(ギデンズの第3の道・アイデンティティポリティックス、ベックのサブポリティックス論)の特徴づけに基づいた分析枠組みを、既存の原発レジーム分析などとつきあわせたうえでの分析枠組みを再構成し、それに基づいた地域権力構造と地域メディアの重層的な関係を科学技術社会論などの成果を参照しつつ、批判的言説分析を使って分析・考察を進めた。具体的には、朝日新聞、中日新聞、読売新聞などの全国紙・地域ブロック紙の紙面分析と、原発立地自治体の有力な地方紙、具体的には、福井新聞、静岡新聞、新潟日報などの紙面の分析を行った。 討議デモクラシー論の観点からは、地域住民が科学技術などの高度に専門的なイシューにおける意思決定に参画するにあたって必要な社会情報論的な前提として、専門家の言説の編成、基本的な地域利害構造の解明、意思決定の構造・制度の理解、政治的な諸関係の配置の理解、政治的な意見対立の認識、それらの情報が地域の状況とリンクして適宜提示されていること、などが必要であると思われる。地方紙は、継続的にその地域の原発の問題を取り上げるが、地域利害対立の深い部分について、意見対立の深いレベルの報道などが不十分、また、科学的専門知識の報道などが不十分であることが浮かび上がった。他方、全国紙などはナショナルメディアは、相対的には科学的専門知識や原発の意思決定システムの問題性についての鋭い分析を加えているが、地域にそれらの問題を引き付けて継続的に報道する姿勢に欠ける、などの特徴が浮かび上がった。これらの分析・考察を今後活字論文として公表していく予定。
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