研究課題/領域番号 |
25380693
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
矢野 晋吾 青山学院大学, 総合文化政策学部, 教授 (00344341)
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研究分担者 |
三須田 善暢 岩手県立大学盛岡短期大学部, 国際文化学科, 准教授 (10412925)
福田 恵 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 講師 (50454468)
高田 知和 東京国際大学, 人間社会学部, 教授 (70236230)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会学 / 農村社会学 / 学説史 / 社会調査 |
研究実績の概要 |
本年度は、「農村社会学」が確立してくる過程を跡付け、それがどのような時代的要請のもとでかたちづくられてきたのかを改めて検討することと、「農村社会学」だけでなく隣接諸分野における農村研究の方法論にも目配りすることを念頭に置いて、次に示すように3回に渡って研究会を開催し、研究課題について議論を行なった。①三須田善暢「土屋喬雄と石神調査」(平成26年6月1日)、②高田知和「昭和初期農村社会史研究と農村社会学①―野本京子『「生活」「経営」「地域」の主体形成』(農文協、平成23)にみる昭和初期の農政言説―」(平成27年1月10日)、③牧野修也「民俗学における村落研究の系譜」(同年3月14日)。 加えて、当初の計画に基づいて戦前期日本農村社会学の系譜上にある研究者へのインタビュー調査を行なった。柿崎京一氏(早稲田大学名誉教授)から行なった有賀喜左衞門の農村社会学についての聴き取り調査は、諸事情により年度をまたいでしまったが(平成27年4月2日)、インタビューデータは文字データに変換し、記録として活用する予定である。 この他、「農村社会学」の地平から新渡戸稲造、土屋喬雄、竹内利美、那須皓、柳田國男等についての再検討を各自で行なったが、その一部として牧野研究員は平成26年6月に岐阜大学地域科学部山崎仁朗研究室にて,鈴木榮太郞旧宅に保管されていた資料を確認と閲覧を行なった。数多くの資料を確認できたが、そのうち、鈴木が主査として審査した竹内利美の博士論文の審査報告原稿を複写した。これについては今後、竹内の学位論文本体を閲覧した上で検討を加えていく予定であり、これによって「農村社会学」の新たな側面を切り拓くことが出来よう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、4つの課題を設定して研究を積み上げていく計画である。課題は①有賀・鈴木が確立したいわゆる日本「農村社会学」の前史を再検討すること(有賀・鈴木以前の課題の摘出)、②有賀・鈴木の視角の再検討(直接指導を受けた関係者からの聴き取り調査、当時のモノグラフの現地調査からの再検討、雑誌や新聞等のドキュメント資料の分析を含む)、それらを踏まえて、③明治以降の農山漁村における社会学的研究の課題と視点を整理し、現代及び今後の農村研究への新たな課題と分析枠組みを提示する、④聴き取り調査資料等のアーカイブ化への準備、である。2014(平成26)年度は引き続き①の分析を行いながら、②の分析・調査と④の準備作業を行う計画であった。 ①については、各自の分担部分の分析を前年から引き続き行ない、それを踏まえて明らかになった課題について議論して検討を行なった。その際、新渡戸稲造、土屋喬雄や那須皓のように従来の「農村社会学」の枠には収まりきらない研究者たちにも視線を向けつつ再検討を行なった。 ②については、平成25年度に引き続き、聴き取り調査を行ない、得られたデータの文字化を実施する予定であった。ただこれは、当初予定していた関係者たちの高齢化や逝去などのために実際に行ない得た回数がかなり限られてしまった。この点、聴き取りの対象者の枠を拡げていくなど再検討する必要があると思われる。 ④については、前年に得られたデータの整理を進め、アーカイブ化への課題の析出し合った。これについてはアーカイブ学会を始めとして近年種々の分野で行なわれているアーカイブ化の課題も見据えたうえで、その課題について再検討していく予定でいる。 なお、これらの諸点については研究代表者が在外研究で米国に赴任していたため、聴き取り調査など一部の進行が遅れた。これについては、2015年度にスピードを上げて進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は、前項で示した通り、4つの課題を設定して研究を積み上げていく計画である。2015(平成27)年度は、まず引き続き、①で示した「農村社会学」の前史を全員で再検討していく。そして②で示した聴き取り調査を、より積極的に行なって前年度までの分を補充していくとともに、「農村社会学」の成立過程でつくられてきたモノグラフや雑誌・新聞等のドキュメントを改めて当時の地平に立って再検討していく。そのうえで聴き取り調査のアーカイブ化も図っていく。また随時、鈴木や有賀に関する公開の研究会も実施する予定である。 ③については、近年都市社会学や農業経済学など「農村社会学」に隣接した諸分野においても、それらが学として成り立つ過程でどのような研究課題があっていかなる視点から検討がなされてきたかを整理する作業が行なわれているので、本研究課題においてもそうした先行研究を参照しながら進めていく。またその際、明治以降の農山漁村についての研究を対象にするにあたっては、「社会学的研究」とは言いつつも現在において所与のものとして考えられている「社会学的」発想にとどまらない広範な視点が必要になろう。すなわち、明治以降の農山漁村についてのあらゆる研究課題のなかで、何が残され何が捨てられることで学としての「農村社会学」がつくられてきたかを①及び②の研究成果を踏まえたうえで全員で議論していく。そしてこのような作業を通じて従来の農山漁村研究の課題と分析枠組みを再検討し、現代及び今後の農山漁村研究につながる新しい視角を提示する作業を行なっていく。 また④については、これまで検討してきたアーカイブ化への課題を整理した上で、資料活用への方向性を示し、積極的に具体化していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究代表者の在外研究により、研究会の回数が予定より少なくなり、旅費などが軽減された。また、インタビュー調査の録音の文字起こしなどの作業については、準備の都合上、翌年度に回した。
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次年度使用額の使用計画 |
研究会を例年のペースで再開するとともに、録音の文字起こしなどは早い段階で発注し完了する予定である。
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