研究課題/領域番号 |
25380694
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研究機関 | 大妻女子大学 |
研究代表者 |
池田 緑 大妻女子大学, 社会情報学部, 准教授 (40337887)
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研究分担者 |
桃原 一彦 沖縄国際大学, 総合文化学部, 准教授 (40369202)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 沖縄 / 基地問題 / 差別・排除 / 県外移設論 / 沖縄系住民 / ライフヒストリー / ポストコロニアリズム / 社会意識 |
研究実績の概要 |
1)文献研究については、日本の平和運動における沖縄基地問題の系譜、ならびに近年の保守派言説における基地問題と「沖縄問題」の概念の転換について、詳細に検討を行った。 2)沖縄の若年層に対する社会意識のアンケート調査については、昨年度からの「持ち越し宿題」となっていたが、検討の結果本年度も行わなかった。理由は、H26年には基地問題を争点とした選挙が沖縄県内で5つもあり、調査結果に大きな影響が出ることが懸念されたためである。この調査については、H27年5月時点で、比較対照データとして沖縄県外での調査も同時に実施されているところである。 3)一方で、ヒアリング調査は昨年度に引き続き順調に進んだ。一つは、主として沖縄県外に在住する沖縄出身者に対して行った。関西においては大阪在住沖縄出身者、兵庫県宝塚市在住の沖縄出身者に対して、沖縄への帰属意識、日本人との差異感覚、それらの世代間の異同などについて聞き取りを行った。関東においては東京在住の沖縄(および奄美群島)出身者に対して同様の聞き取りを行った。つぎに、大阪を中心として、基地の県外移設を進める運動体(日本人による運動)に継続的に聞き取り調査を行い、運動の変遷とそこに参加している人々の、沖縄と日本に対する社会意識の変化を詳細に聞き取った。 4)本研究の成果の一部は、日本解放社会学会(第30回大会)において報告され(池田・桃原)、また掲載予定も含めて3本の論文にまとめられた(池田2本、桃原1本)。また5月には、大阪市において、関西在住の沖縄系住民組織が主催するシンポジウムに代表者が出席し、本研究の成果の一部を社会に還元する機会を得た。年次報告書の刊行を予定しながら、上記アンケート調査が実施できていないことから刊行が叶わなかった。早急に中間報告書を刊行する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「やや遅れている」と評価した理由は、主に2つある。1つは沖縄での若年層を対象としたアンケート調査が未実施であることである。H26年には(H25年に引き続き)、沖縄の基地問題が大きな争点となった選挙が沖縄県内で5つもあり、一年を通じて基地問題が論争的焦点となっていた。さらに日本(沖縄県外)からも基地問題について様々な議論が行われ、それぞれ直前に行われた選挙の結果が調査に直接的な影響を与えることが危惧された。また、沖縄在住の若者、さらには関東や関西に在住の沖縄県出身者への聞き取り調査の中から、追加的にアンケート調査に盛り込むべき論点が浮かび上がり(基地問題についての情報経路等)、それらの検討にも時間を要した。さらにアンケート調査設計の段階で、いくつかの論点については比較対照データとして、沖縄県外の若者達にもアンケート調査を行う必要性が確認され、その手順と調査票の設計が行われた。さらに、これらの調査を大妻女子大学と沖縄国際大学の研究倫理委員会に事前に審査を要請し、その審査結果を待つ期間も必要であった。 この1年間の沖縄社会の異常ともいえる政治的状況の流動性、ならびに上記の追加的項目の検討、対照データとしての沖縄県外でのアンケートの設計、等の作業が重なり、実施は遅れている。しかし、H27年5月に沖縄県内で調査は実施されており、6月からは沖縄県外での調査も開始される。 2つめとしては、中間報告書の刊行の遅れがある。この中間報告書には上記のアンケート調査の結果(速報)を掲載する予定であり、アンケート調査の遅れが中間報告書の刊行の遅れの原因となっている。 一方で、聞き取り調査、文献調査は予定を超えて順調に進んでいる。むしろ、聞き取り調査から得られた知見をアンケート調査に生かすために、アンケート調査が遅れているという側面もある。それらの進捗状況を比較衡量し、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度であるH27年度には、遅れていた沖縄における若年層へのアンケート調査、ならびに追加的に対照データとしての沖縄県外の若年層へのアンケート調査を実施する。これらの調査は、沖縄県内・県外の大学、専門学校等で実施される。すでに実施校の選定は終わり、沖縄県内についてはすでに5月から調査を始めている。沖縄県外についても6月より実施予定である。また引き続き、沖縄での聞き取り調査(運動体、産業界、マスコミ関係者、等)と、関西と関東における聞き取り調査(運動体、沖縄からの移住者等)を継続的に行う。これら2つの領域については、H27年夏を目標に、これまた遅れていた中間報告書の形で成果をまとめたい(アンケート調査については速報となる)。 さらに、基地問題と社会意識をめぐる沖縄と日本(沖縄県外)の双方の近年の言説を分析し、これまでの文献研究と接合し、(ポスト)コロニアリズム、親密性、権力、の問題として、日本と沖縄の社会意識のあり方と変遷を位置付けたい。 定量的調査、定性的調査、文献研究、の3つを合わせて、本研究の目標であった、日本と沖縄の社会意識の現状と変化について、最終的な知見を年度内に最終報告書としてまとめる予定である。また、これまでの研究の成果を、学会報告(日本解放社会学会・9月)、ならびに論文等で公表したい。なお、沖縄におけるアンケート調査については、新聞等の報道機関ともその結果について公表する方策を相談中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
H26年度に未使用額が生じた理由は主に2つである。1つは、H26年度に予定していたアンケート調査が実施できなかったことである。実施に際しての諸費用(運搬・郵送費等)、入力費用等に相当する金額が残ったことになる。2つめは、アンケート調査実施の遅れに伴って、中間報告書の刊行が遅れていることである。これについては、印刷費や郵送費に相当する金額が残っている。 また、聞き取り調査において、謝金を辞退される方も何人かおり、その謝金分が余っている。
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次年度使用額の使用計画 |
H27年度には、5~6月にかけてアンケート調査を実施する。繰り延べされた費用はその費用(実施費用・入力費用)として使用される。また、中間報告書も夏をメドに刊行の予定で、繰り延べされた費用から充填される。 それ以外には、当初の予定通り、インタビュー調査(旅費および謝金)、文献調査用の文献購入費、最終報告書作成等の費用として使用する予定である。
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