本研究はローカルニュースの現状とキャスターの意識について探り、地域ジャーナリズムのあり方を探るものであり、平成28年度は、27年度に引き続いて地方局で聞き取り調査を行い、その成果を論文にまとめた。 概要は以下のとおりである。28年度には3社の聞き取り調査を行い、前年度実施分を含めて計10社、31人の報道統括者、キャスターから話を聞いた。その成果の一部は平成29年3月刊行の『駒澤社会学研究』第49号に論文を発表した。 本稿では、放送法に規定されている「客観性・中立性・公平性」について、地域ジャーナリズムの担い手がいかに認識し報道にあたっているのかを分析した。これらの理念は報道する際の規範となっているが、実際の判断は放送局の判断に任される。本調査では、多くの放送局で、「中立・公平」を目指して、多様な意見を取り上げてバランスを取った報道を心がけていることが明らかになった。また、客観性について、完全に主観を排除することは不可能と認識しつつも、客観報道は理念として目指すべきとする意見が目立った。さらには、地域ジャーナリズムの特徴として、常に軸足を住民側に置き、中立や公平を心がけながら、地域住民本位の報道を心がけている点が明らかになった。例えば、原発や国防などの問題については、放送局としての判断を避けながらも、地域住民の代弁者としてふるまう姿勢を重視しており、これらは単に両論併記というよりも、より「公正」な報道を目指す姿勢といえるであろう。 以上のように、聞き取り調査を通して、放送法に基づく「中立・公平性」を原則としながら、地域住民に寄り添う地方局としてのスタンスが明らかになった。 なお、本研究は平成28年度が最終となったが、インタビューデータについてはすべてをまとめきれていないため、引き続き、得られたデータをまとめて地域ジャーナリズムのあり方を探っていきたいと考えている。
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