研究課題/領域番号 |
25380697
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
芳賀 学 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (40222210)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 社会学 / 祝祭 / 都市 / コミュニティ / 踊り |
研究概要 |
本研究の目的は、「よさこい系祭り」の全国伝播を事例として、現代日本で生じている祝祭空間の構造変動について、実態を把握するとともにその社会的発生メカニズムを解明することにある。 初年度となる2013年度は、この課題の遂行のために、先行業績や各種図書館に所蔵されている資料を収集するとともに、東京高円寺阿波おどりと、全国の「よさこい系祭り」の中から主だったもので、かつ私が訪れたことのない祭りを選んで、各種の資料収集・視察・簡単なインタビューによる基礎的なフィールドワークを実施することを予定していた。 このうち、東京高円寺阿波おどりに関しては、他の祭りと日程が重なったため、来年度以降に本格的な調査は延期することとしたが、全国の「よさこい系祭り」に関しては、うらじゃ(岡山県岡山市)、にっぽんど真ん中祭り(愛知県名古屋市)、神戸よさこい祭り(兵庫県神戸市)、にいがた総踊り(新潟県新潟市)、YOSAKOIさせぼ祭り(長崎県佐世保市)、よさこい東海道(静岡県沼津市)、浜松がんこ祭り(静岡県浜松市)の7か所を訪れて精力的に各種資料の収集と視察を行い、うらじゃに関しては実行組織のリーダーに対してインテンシブなインタビューを実施することができた。そこで、得られたデータの分析はいまだその途上であるが、全国で実施されている「よさこい系祭り」の実態が、地域と時代をはじめ、舞台となる都市規模、運営主体、主な踊り手や観客層の差などによって、かなり多様であり、かつ現在進行形で変化していることがすでに明らかとなっている。 こうした知見のうち、総踊りに関する部分は、「現代「総踊り」考-「よさこい系祭り」にみる共同性と個別性-」『上智大学社会学論集』38、pp。25-42にまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的は、研究実績の概要に記したように、「よさこい系祭り」の全国伝播を事例として、現代日本で生じている祝祭空間の構造変動について、実態を把握するとともにその社会的発生メカニズムを解明することにある。 そのために2013年度予定していた作業のうち、先行業績や各種図書館に所蔵されている資料の収集と、全国の「よさこい系祭り」についての基礎的なフィールドワークに関しては予定通りに遂行することができた。 東京高円寺阿波おどりに関する調査に関しては2014年度以降に延期したが、それは、調査した「よさこい系祭り」と開催日程などが重複しそちらの調査を優先したための措置である。「よさこい系祭り」の実態把握は急ぐ必要があるとともに、高円寺阿波おどりに関しては、職場・自宅から近い距離で実施されているため、2014年度以降の計画を工夫することで十分対応可能と考える。
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今後の研究の推進方策 |
2014年度以降の3年間で、本格的なフィールドワークを実施して、全国の祝祭空間の実態を把握するとともに、現在の状況がいかに発生し進展してきたのか、その社会的メカニズムを解明するという、本研究の目的の遂行に努めたい。 まずは、2014年度は、2013年度積み残すこととなった東京高円寺阿波踊りの調査を実施する。阿波踊りは、「よさこい系祭り」の前に全国伝播を果たしたという意味での重要な先行現象であり、比較対象である。それゆえ、この作業によって本研究に有意義な知見が得られると期待される。 さらに、「よさこい系祭り」に関する調査の方では、今年度訪問した7か所の中から2か所程度を選定し、インテンシブなインタビューを実施しさらに情報収集を行いたい。そして、2014年度から、「よさこい系祭り」の2大中心地である、よさこい祭り(高知県高知市)とYOSAKOIソーラン祭り(北海道札幌市)の調査にも取り掛かることとしたい。 こうして、徐々に対象とする祭りの範囲を拡大しながら情報を集め、そこで得られた情報を突き合わせて分析することを繰り返すことによって、環境や時代の差などによる偏差とともに、この現象全体の共通性も徐々に把握可能となると考えられる。大学の教育活動などとの両立の関係で、実施困難な事態も生じるとは考えられるが、実施時期や年度などを工夫することで可能な限り実現していきたいと考える。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度実施予定の東京高円寺阿波おどり調査を次年度以降に延期したことによって、残額が生じた。 次年度以降の予算と合わせて、主として東京高円寺阿波おどりの調査費用に充当する。
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