本研究の目的は、「よさこい系祭り」とその先行現象である阿波おどりの全国伝播を事例として、現代日本社会で生じている祝祭空間の構造的変動について、実態を把握するとともにその発生と進展に関する社会的メカニズムを解明することにある。 4年目(最終年度)となった2016年度は、この課題遂行のために、「よさこい系祭り」を中心に全国の祭りについて探索型調査を実施するとともに、前年度までに選定した東京高円寺阿波おどり(東京都杉並区)とうらじゃ(岡山県岡山市)に本格的なフィールドワークを実施し、さらに、よさこい祭り(高知県高知市)に関して補足的なフィールドワークを行った。このうち、探索型調査に関しては、ヤートセ秋田祭(秋田県秋田市)、うるま市エイサー祭り(沖縄県うるま市)、YOSAKOIソーラン日本海本祭(石川県羽咋郡宝達志水町・内灘町)、YOSAKOIさせぼ祭り(長崎県佐世保市)の4か所を対象に実施した。現代日本の祝祭の実情に関して、共通点・相違点とその社会的背景など、さまざまな情報を収集することができた。今年度は、「よさこい系祭り」に関して、いずれも大都市圏ではない地域で開催されているものを取り上げたため、過疎化や観光化などへの対応という側面について特に有益な情報が得られた。また、「よさこい系祭り」や阿波おどりと並んで、全国に浸透しつつあるエイサーをも調査することで、有益な比較検討のデータを得る機会にも恵まれた。 以上をもって、当初計画した研究課題について必要な作業をすべて終了することができた。
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