本研究は、多発性嚢胞腎(PKD)という単一遺伝子疾患を生きる当事者と、その疾患に関わる遺伝学的知識を扱う側の医療者へのインタビュー調査を行い、病者の経験が新しい医学的知識のもとでどのように編成されているのかについて、明らかにすることを目的としている。H27年度は,最終年度として分析結果を、日本保健医療社会学会大会およびQualitative Health Research Conferenceにおいて報告した。 90年代以降、情報を伝えていくための方法として患者会が組織され、「同じ病の経験をしている」という理解のもとで、知識の産出へ向と向き合っていく志向が醸成されてきた。そうした志向のもとで、2003年の動物研究の成果公表以降、治験への参加、新薬の承認、そして新しい難病法のもとでの助成が、実際に可能になってきた経緯を示し、こうした過程で、どのように人びとの行為や経験の理解が変化してきたのかについて、社会学的な記述を行った。 これらの研究の一部は、『概念分析の社会学2』という書物の一部としてまとめられた。また、本研究の遂行に関わる方法論的な論考を、「人間の科学の諸概念についての社会学的概念分析」というテーマのもとで発表した。
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