本研究は、常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)という単一遺伝子疾患を生きる当事者と、その疾患に関わる遺伝学的知識を扱う側の医療者へのインタビュー調査を行い、病者の経験が新しい医学的知識のもとでどのように編成されているのか、明らかにした。90年代半ば以降、遺伝子解析の進展とともに患者会が組織され、「同じ病の経験をしている」という理解のもとで、知識の産出へ向と向き合っていく志向が醸成されてきた。そうした志向のもとで、治験への参加、新薬の承認、難病法のもとでの助成が、実際に可能になってきた経緯を示し、こうした過程で、どのように人びとの行為や経験の理解が変化してきたのか、社会学的な記述を行った。
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