研究課題/領域番号 |
25380702
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
好井 裕明 日本大学, 文理学部, 教授 (60191540)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 被爆の記憶 / 映画社会学 / エスノメソドロジー / 差別・排除 / メディア研究 / 社会問題 / 日常的記憶 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き広島市平和記念館資料センターに所蔵されている禁退出の資料(50年代から80年代にかけての平和教育関連文献や当時の週刊、月刊マンガに掲載された被爆問題をテーマとした作品、教育や労働組合の機関誌、若い世代が読む芸能文化雑誌や受験雑誌、主婦層が読む雑誌などに掲載されていた被爆問題関連記事、さらには広電、広銀など地元企業広報誌など)を詳細に閲覧し、必要なものを複写した。 平行して被爆ドキュメンタリーの映像解読を進め論文化した。「定型化する力と個別化する力―被爆を描くドキュメンタリーを解読する」『理論と動態』第7号、社会理論・動態研究所、2014年11月20日、21-39頁として成果を出している。本論文では、NHKスペシャル「なぜ助けられなかったのか……~広島・長崎7000人の手記~」(1990年8月2日放送)、ETV特集「昭和20年 被爆の言葉 第一夜 被爆の証として」「昭和20年 被爆の言葉 第二夜 ヒロシマの心の芽生え」(1996年8月7・8日放送)、NHKスペシャル「サダコ~ヒロシマの少女と20世紀」(1999年8月6日放送)という作品を取り上げ、映像とナレーションを詳細に解読することで、視聴する側に働きかける「定型化する力」と「個別化する力」を例証した。そして被爆表象を考えていく上で、この二つの力のバランスや過剰が問題となること、そのバランスこそが、被爆の記憶を継承していく上での重要な「問題」となることを論した。 今年度は、資料閲覧収集の作業をさらに進めるとともに被爆映画の解読作業も精力的に行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
被爆表象の詳細な解読から被爆の記憶の「語り方」を考えようとする本研究において、毎年原爆関連映画を解読した論文や被爆ドキュメンタリーのナレーションと映像の関係性を考える論文を執筆してきている。そしてその成果として、被爆の記憶の特徴的な「語り方」、被爆表象を呈示する「方法」をとりだすことができている。 また被爆言説・平和教育をめぐる言説の解読に向けて広島市平和記念館所蔵の禁退出の貴重な資料を渉猟し、内容を検討する作業をとおして、さらに解読すべき価値ある言説を選択し、該当部分を複写し収集する作業が順調に進んでいるので。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、引き続き広島市平和記念館資料センターに所蔵されている資料の閲覧・収集という作業を進めながら、収集した資料を整理するとともに、大衆映画における被爆表象を解読する論考を書き進めたい。この映画解読、ドキュメンタリー解読の成果は、本研究終了後になるが『原爆映画の社会学』(仮)という形で単著としてまとめたいと考えている。 また、被爆をめぐる言説の解読は、最終年度で完了することはできないが、まずは今後の分析作業のためにも最終年度にあたっているので、収集した資料の整理とこれまでの論文成果などをあわせて報告書を作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
関連図書の購入状況の結果、652円の差額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
652円は今年度使用予定の消耗品費に加えることで使途する予定である。
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