今年度は、被爆ドキュメンタリーや映画の収集および解読と平行して、資料収集に集中した。広島市平和記念資料館の地下にある情報資料室に何度も出かけ、保管されている禁帯出資料をできるかぎり閲覧し、言説分析に必要な資料を選定し、複写した。具体的には『婦人倶楽部』『婦人之友』『婦人生活』『婦人朝日』などの女性雑誌、『アサヒグラフ』『毎日グラフ』『太陽』などの写真雑誌、『週刊朝日』『サンデー毎日』『週刊読売』『週刊現代』『朝日ジャーナル』などの週刊誌、『中央公論』『婦人公論』『思想の科学』『潮』『リーダーズダイジェスト』など月刊総合誌、『歴史評論』『歴史地理教育』『広島教育』『家庭と教育』など学術誌や教育問題誌、さらには『高1コース』などの大学受験雑誌、『マーガレット』など週刊漫画雑誌、地元銀行や国鉄労組、RCCなど地元マスコミの社内誌、福島町など広島市内地域で出された被爆体験手記集など約600点を選定し複写した。膨大な数にのぼる資料であり、現在分析に利用できるよう整理をした。言説分析に関しては、以前の科研で収集している新聞報道記事とあわせて、今後少しずつ成果を形にしていきたいと考えている。 本研究では、「製作された」映像・言説のなかに、平板化され、個別の人生等歴史性が語りつくされていない被爆イメージをめぐる描き方や語り口の特徴が明らかになった。本研究から得られる成果は、私たちの日常生活世界で維持されている偏った被爆問題イメージを説得的に例証できる資料となり、同時に、今後日本社会に対して要請されている、より意味に満ちた「被爆の記憶」の継承という実践的な課題を達成するために、どのような新たな被爆をめぐる描き方や語り口が創造できるのかを模索する重要な資料を提供できると考えている。
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