研究課題/領域番号 |
25380703
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
田嶋 淳子 法政大学, 社会学部, 教授 (20255152)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 中国系ニューカマーズ / 移住第二世代 / ニューヨーク / トロント / 多文化教育 / 中文学校 |
研究実績の概要 |
1.ニューヨークに於ける中文学校調査(小中、および多言語幼稚園)ニューヨークで20年来展開している中文学校2校に調査を依頼し、1校で校長と理事長へのインタビューを実施した。H中文学校は1996年以来保護者のボラタリーな活動によって、維持されてきた。アメリカ留学経験者の中でも、高学歴層が暮らすニューヨーク郊外のコミュニティ・カレッジの教室を借りて、運営されている。現在は2つの校舎に合わせて千名の生徒が通う週末学校である。教員は留学生や高学歴な保護者が担っている。生徒は両親あるいは片親が中国語を母語とするものが全体の9割を占めている。このほか、ロシア、インド、アメリカ、韓国、日本の子弟もいる。中国語を母語とする家庭も多様化しており、大陸のみならず、香港・台湾、東南アジアなど幅広く受け入れている。多言語幼稚園はニューヨーク市の財政的な援助を受けた正規の幼稚園であり、こちらでは中国語と英語による保育を展開している。就学前教育を重視する市の方針により、語学についても、早期の教育が始まっている。 2.トロントに於ける第二世代に対する中文教育調査:トロントに於ける中文教育は保護者の要求があれば、市が予算をつけ、ボランタリーな形で公立の小中学校校舎を利用し運営されている。運営はボードによって担われている。ここでは教員に若干の給与が支払われている。D校の校長によれば、移民第二世代に母語を維持させるのは難しい。近年では、営業目的で中文学校を立ち上げる大陸系の経営者も出てきており、夏休みや放課後に子供を預かると同時に語学教育や文化を学ばせる機会を提供している。ただし、移住第2世代の言語・アイデンティティ問題と同時に中学・高校から早期に移住し、学歴をつみあげる移民が増加傾向にある点が注目される。今後、こうした新たな傾向についても調査を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究協力者の病気による離脱、日中関係の悪化により調査対象者の協力を得られなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
2015年度に実施できなかったニューヨークB中文学校の聞き取り調査、およびバンクーバーに於ける中文学校教育の実態について、従来型のものと新たな傾向としての中・高校段階での留学生送り出し状況について、調査を予定している。 これまでの成果と合わせ、2016年度中にはまとめ上げて、公表したいものと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
旅費に計上していた部分が、研究協力者の病気による離脱のため、未使用となり、すべて単独での調査となった。来年度に向けて、調査未了の地域と対象について、再度調査を実施する予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
2016年7月 バンクーバーに於ける中文学校調査を予定、2016年10月 ニューヨークに於ける中文学校の補足調査、2017年2月 オーストラリア・メルボルンに於ける補足調査(以上はすべて、当初の計画に含まれていた部分で、調査未了の補足調査である)
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