ポスト育児期の女性のワーク・ライフ・バランスを検討するにあたり、女性の就業行動に関するデータ分析をおこなった。もちいたデータは、公益財団法人家計経済研究所が実施している「消費生活に関するパネル調査」である。 第1子出産年には70%程度が非就業であったのが、第1子出産7年後には、非就業者は50%程度にまで低下し、非正規雇用者が1960年代生まれでは20%程度、1970年代生まれでは30%程度にまで増加しているという前年度までの実績をふまえ、女性の再就職行動について検討した。第1子出産年に就業していなかった人の再就職には、親との居住距離や子ども数といった家族的要因のほかに、初職の職種が関連していた。初職が事務職であった人に比べて、専門・技術職や自営業であった人は再就職する確率が高かった。その背景には、日本の内部労働市場において子育てのために退職した女性が再びキャリア形成していけるようなポジションが用意されていないことがあると推察された。 さらにポスト育児期の女性の働き方について、国際比較によって検討した。The International Social Survey Programmne (ISSP) 2012年調査Family and Changing Gender Role IVをもちいて、異なる福祉レジームの社会(自由主義的、社会民主主義的、保守主義、および東アジア・南ヨーロッパ)におけるポスト育児期の女性の就業行動を分析した。その結果、日本を含む東アジア・南ヨーロッパ社会では、母親の就業率は、末子が乳幼児期の段階だけではなく末子が小学生段階においても、他の福祉レジームの社会に比べて低く、さらに母親が高学歴か否かにかかわらず就業率が低いところに特徴があることが明らかになった。 以上のような研究成果を研究論文・書籍として発表し、研究成果の最終的なとりまとめをおこなった。
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