研究課題/領域番号 |
25380705
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研究機関 | 立正大学 |
研究代表者 |
堀田 恭子 立正大学, 文学部, 准教授 (20325674)
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研究分担者 |
宇田 和子 福岡工業大学, 社会環境学部, 助教 (90733551)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | カネミ油症 / 台湾油症 / 油症救済法 / 台湾油症ケア法 / 被害の実態 / 救済制度 |
研究実績の概要 |
今年度は昨年度実施した台湾油症における現地調査で得られたヒアリング記録や収集資料等の整理・分析に着手した。他方で日本のカネミ油症における油症患者へのヒアリング調査を実施した。特に日本においては油症に関する救済法が成立し、原因企業を含む三者協議会が開始された。そこに出席している油症患者へのヒアリング調査、ならびにいまだ救済のめどがたっていない、2世の油症患者へのヒアリング調査も実施した。 その結果、多数ある被害者団体と原因企業、政府との間でのやりとりはすすんではいるものの、その効果としては微々たるものであり、次年度の救済法見直しにむけては被害者団体の要求等がうまく展開していないことが確認された。さらに2世に関してはほとんど表に出てくる患者もなく、かなり困難な状況におかれていることも確認された。 また年があけて、台湾油症において台湾版救済法と言われる「ケア法」が成立したため、急遽現地に調査に行き、資料収集ならびに台湾油症患者と研究者にヒアリング調査を行ってきた。その結果、台湾油症では公衆衛生を専門とする研究者が台湾油症患者のQOLを調べ、例えばエイズ患者より台湾油症患者のQOLが低いことを提示したことや、さらに患者が代表である支援者団体の運動も契機となり、ケア法が成立したことがわかった。 台湾油症のケア法の場合、地域や職場等で差別的発言等を受けた場合、罰金を課すということが法的に規定されていることや、総統府令としてだされたことから、たとえ政権が交替しても、その法律は消滅しないことなどが聞き取られた。しかし、台湾油症においても、いまだ潜在化している患者が多くいると思われる中部での患者の救済問題が一つの大きな課題となっていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は台湾油症事件についての調査研究が主であったが、今年度は日本の救済法制定をふまえ三者協議(患者・国・原因企業)が実質開始された段階での、油症患者へのヒアリング、さらにいまだ救済制度が構築されていない2世の患者へのヒアリング調査が可能となった。 さらに台湾油症において、救済法と言われているケア法が年度末近くに制定し、そのことに関しても資料収集と関係者によるヒアリング調査が実施できたことは大きい成果であった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、調査研究活動に多くの時間はさけず、昨年度の記録おこし等が中心の作業となったが、日本でのヒアリング調査の実施、台湾油症事件でのケア法に関する調査研究が短期間ではあるものの実施可能となった。 そのため、今後はそれらの資料やデータの整理整頓、分析をすすめるとともに日台油症事件の救済制度からみた比較考察、さらに被害の実態の比較考察もおこなっていき、次年度をまとめの年度としたい。
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