研究課題/領域番号 |
25380707
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
塚田 守 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (80217273)
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研究分担者 |
佐々木 裕子 愛知医科大学, 看護学部, 准教授 (10351149)
福良 薫 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (30299713)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 看護ケア / 語りの社会学 / 訪問看護師 / 在宅看護 |
研究実績の概要 |
本研究は医療現場で活躍している現役看護師に対してインタビューを行い、看護ケアにおける「語り」の果たす役割について「語りの社会学的方法」によって考察することであった。本研究では、「拒否」的態度を持つ患者への看護ケアについて、看護師に対してインタビューすると同時に、その看護師がその事例を発表した現役看護師たちのセミナーで話された「語り」が分析された。その分析の結果、患者が訪問看護師への拒否的態度を変化させた要因として、1) 看護師による語りかけと傾聴による一生懸命なケア、2) 拒否されても嫌われてもケアに徹する看護師の態度、3) 患者の悲しみや苦しみをそのまま受け取る看護師の態度であったという知見を得た。また、この事例発表の場でさまざまな看護師によって話された「語り」の分析を行うことで、ケアの仕方に悩む看護師がその悩みをさまざまな経験を持つ看護師に語り、共有することにより、看護師自身の看護ケアの振り返りを行い、実践していた看護ケアの本質に関する理解と認識が深まることが明らかになった。本研究で行われた他の事例でも同様に、看護師が自らの経験を他の看護師に語り、看護ケアを考える場を持つことの重要性が認識された。また、本研究で行われた語りを取り入れた看護ケアについての先行研究レビューにより以下の知見を得た。訪問看護は利用者の家庭内という特殊な環境において出向いた看護師で多くの判断をして対応を迫られる。そのために客観的な実態や看護師の判断を明らかにすることは難しい。そこで必要になるのは、看護師の「語り」を描写することによって得られる訪問看護に必要とされる看護ケアの解明である。しかし、訪問看護師を対象とした研究の中で「語り」に注目した研究は約900件中30件程度に過ぎず、今後、訪問看護師の「語り」を研究し、在宅看護の臨床現場を理解する研究が必要であろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度以来看護師にインタビューを行うと同時に、看護師たちが事例発表をするセミナーに定期的に参加して、インタビュー対象者、セミナー参加者の許諾が受けることができたものに関しては、全て録音し文字起こしする作業を進めてきている。しかし、セミナーでの語りの「多声性」に注目した分析をまとめることは極めて困難だったので、草稿レベルの分析はできたものの、学会発表で口頭発表することができたのは1篇にとどまっている。また、看護師の看護ケアに関する「語り」についての分析も論文として出版できたのは1編にとどまっている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究期間(3年間)のうちに、看護師たちのセミナーへの参加や看護師へのインタビューを行い、録音された語りを文字起こしの作業を行い、分析すべきデータが膨大になっている。今後は、「語りの社会学」や「臨床の現象学」に関する文献研究を行い、すでに文字起こしされたデータを意味ある分析あるいは描写をするヒントを得たいと考えている。そして、4年目にはそれらのデータ分析し、そのまとめを報告書あるいは書籍として出版したいと考えている。また、本研究の過程で在宅看護における訪問看護師の「語り」を聞き取ることの重要性が認識されたので、今後は、訪問看護師の「語り」を分析することで、在宅看護についての研究を展開したいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
報告書(冊子)の印刷費を計上していたが、データをさらに分析しより充実した報告書を目指すために、予算を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
収集されたデータの更なる分析を行い報告書を2016年度末までに出版する予定である。
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