研究課題/領域番号 |
25380711
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研究機関 | 日本福祉大学 |
研究代表者 |
後藤 澄江 日本福祉大学, 社会福祉学部, 教授 (60247674)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 名古屋市地域委員会モデル検証 / 名古屋市地域委員会提言書作成 / ヒアリング調査 / 大都市における生活困難者 / 参与観察調査 |
研究実績の概要 |
平成26年度の取組は、主に以下の4点である。 第1に、名古屋市の「地域委員会」第2期モデル実施(平成25年度~26年度)について、地域委員会研究会の一員として、検証作業を分担すると共に提言書作成に関わったことである(『提言書ー地域委員会の新たなモデル実施(第2期モデル)検証結果報告』平成26年10月15日)。第2に、第2期モデルにおける7カ所の「地域委員会」について、公開の会議等への出席を踏まえて収集した事業内容や活動実践の記録データを整理して、社会的包摂の可能性と限界という視点からの分析に着手したことである。 加えて、第3に、地域住民組織の再構築やコミュニティ・エンパワメント政策についての国内外の資料収集に継続して取り組んだこと、第4に、大都市における生活困難者の実態を把握すると共に、地域社会の中で社会的に排除されている人々を包摂することの可能性や限界への理解を深めることを目的として、社会福祉専門職へのヒアリング調査を進めたことである。また、本研究課題の基盤となった「地域子育て支援システム研究会」の場でも、困難を抱えた家族や個人の支援に関わっている社会福祉専門職から事例を収集した。 さらに、訪問調査の実現に向けて、ロスアンゼルス市「ネイバーフッドカウンシル」についての情報収集を続けた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究のテーマに関してとくに重要となる論点は、「大都市における地域住民組織の再構築によるコミュニティ・エンパワメント政策は、果たして、社会的に不利な条件を抱えた家族や個人を包摂する地域コミュニティの醸成をもたらしているのか。それとも、そのような家族・個人への新たな疎外経験の付与に結びついているのか。」である。 名古屋市の「地域委員会」第2期モデル実施(平成25年度~26年度)について、地域委員会研究会の一員として、検証作業を分担すると共に提言書作成に関わったことを通して、また、第2期モデルにおける7カ所の「地域委員会」についてのデータ収集に関わる中、日本の大都市において包摂型コミュニティを再構築することの促進要因や阻害要因がいくつか浮かび上がってきている。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は本研究課題の3年目となることから、論点である「大都市における地域住民組織の再構築によるコミュニティ・エンパワメント政策は、果たして、社会的に不利な条件を抱えた家族や個人を包摂する地域コミュニティの醸成をもたらしているのか。それとも、そのような家族・個人への新たな疎外経験の付与に結びついているのか。」について、ロスアンゼルス市「ネイバーフッドカウンシル」と名古屋市「地域委員会」モデルとを比較しながら、一定の結論を見出すため、残された調査と分析作業を進める。 ロスアンゼルス市「ネイバーフッドカウンシル」が、社会的包摂を推進するために、運営規則策定・委員選挙・新人委員研修・会議運営・収支報告・情報発信・評価指標の開発等において、どのような工夫や支援を行ってきたかについては、電子メールでの情報交換や公開情報で入手できているものの、まだ、分析できていないままである。この点、分析を早急に進めた上で、知見交換のための訪問を実施したいと考えている。 市民対象の講義やシンポジウム、また、名古屋市関連の「スーパーメガリージョン研究会」等では、既に、一定の成果を還元している。今後は、学会発表や論文投稿という形での研究成果の発信にも取り組みたい。さらに、研究成果報告書と共に、概要版を英文で作成する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度は、国内調査やロスアンゼルス市「ネイバーフッドカウンシル」等、国内外の「地域委員会」調査の予算を検討したが、直近の資料分析を先行させる必要が生じており、また、国内のモデルとなる名古屋市地域委員会委員として、評価作業や提言書作成に関わったことも次年度使用額の発生に影響した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は国内外の調査を実施するとともに、学会・研究会発表や論文投稿という形での研究成果の発信にも取り組みたい。さらに、研究成果報告書と共に、概要版を英文で作成する予定である。平成25年度・26年度に繰り越しした予算も含めて、これらの取組に使用する予定である。
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