研究課題/領域番号 |
25380712
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
菊池 恵介 同志社大学, グローバル・スタディーズ研究科, 准教授 (70536945)
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研究分担者 |
森 千香子 一橋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (10410755)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | レイシズム / 差別・排除 / 多文化共生 / 植民地主義 / グローバル化 / 階層格差・貧困 / 新自由主義 / 国際研究者交流 |
研究実績の概要 |
昨年度は、レイシズム関連の文献・資料・データを収集し、英・仏・蘭の三か国の比較研究に向けた基盤づくりを進めた。 上半期は、フランスの反レイシズム運動の歴史に関する文献や資料を集中的に精読すると同時に、a)植民地主義とジェンダーの問題を描いた「マダム・ラ・フランス」、b)フランスにおける移民二世の権利運動を描いた「平等への行進」の二本のドキュメンタリー映画の日本語字幕版を制作した。そして7月中旬に、パリ第10大学のアブデラリ・ハジャット准教授(社会学)、ならびに、上記の二作品を制作したサミア・シャラ監督を日本に招聘し、一橋大学(7月15日)と同志社大学(7月17日~18日)で上映会と講演会、そしてシンポジウムを開催した。 下半期は、二年間の研究成果をまとめる作業を進めると同時に、ヨーロッパの移民をとりまく現状の分析に力を注いだ。とりわけ、昨年7月から8月にかけてヨーロッパに大量に流入したシリア難民の問題、そして11月中旬にフランスで起きた同時多発テロの分析に多くの時間を費やした。さらに10月から研究分担者の森千香子(一橋大学)がプリンストン大学で在外研究をする機会を得たことから、ヨーロッパのレイシズム研究に取り組むアメリカの研究者とのネットワークづくりも進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の実施目標は、①収集した文献・資料・データの精読と整理、②国際シンポジウムの開催、③研究成果をまとめた報告書の作成であった。 ①と②に関しては、概ね順調に進んだ。とりわけ、7月に東京と京都で開催した公開講演会や国際シンポジウムを通じて、この間の研究成果の一部を公表する機会を得た。また、招聘した海外研究者との一週間にわたる議論を通じて、ヨーロッパにおけるイスラムフォビア(反イスラム感情)の現状や反差別政策の問題点について認識を深めることができた。 だが下半期は、本研究と密接に関わる一連の事件の発生により、予定していた報告書づくりの作業を一時中断し、状況の分析に当たらざるをえなかった。具体的には、7月から8月にかけて起きたシリア難民の大量流入の問題、そして11月にフランスで起きたイスラム国による同時多発テロである。これらの事件の発生を受けて、a)現地の状況の把握、b)EU諸国の対応の検討、c)草の根レベルでの反イスラム感情の高まりなどの分析に多くの時間と労力を割くことになった。 以上により、研究の進捗状況は、当初の目標よりも「やや遅れている」と言わざるをえない。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、昨年に引き続き、研究の総括作業を行う。まず上半期は、これまでに収集した文献の精読を続けると同時に、社会調査の結果を整理する。そして最終的な分析・検討を加えて、新たなレイシズム理論の構築を目指す。そして、研究分担者がアメリカから帰国する下半期には、ふたたび海外研究者を交えてワークショップを開催し、研究成果の一部を報告すると同時に、今後の国際共同研究の構想を協議する。さらに年度末までに、この間の研究成果をまとめた報告書の完成を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度は、夏から秋にかけてヨーロッパで起きた一連の事件(シリア難民の大量流入とフランスにおける同時多発テロ)の分析に多くの時間を割いたことから、下半期に予定していたワークショップの開催と報告書の作成作業を次年度(今年度)に持ち越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
11月に海外研究者を招聘してワークショップを開催し、研究成果の一部を報告すると同時に、年度末までにこの三年間の研究成果の報告書を作成し、繰り越し予算を執行する。
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