研究課題/領域番号 |
25380720
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大阪樟蔭女子大学 |
研究代表者 |
川野 佐江子 大阪樟蔭女子大学, 学芸学部, 准教授 (60582632)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 相撲 / 力士 / 身体 / スポーツ社会学 / 表象 |
研究概要 |
本研究の目的は,大相撲とその力士達がどのように社会に受容されてきたのかを探ることである。そしてそのことによって相撲独特の世界観が,いかに一般社会と折り合いをつけて来たのか,また,力士達の身体はどのように振る舞わざるを得なかったのか(土俵の内で,あるいは土俵の外で),について調査研究するものである。とりわけ,これまでの相撲研究ではほとんど考察されてこなかった現象学的身体論の視座により力士の身体に着目し,「1,近代的美意識とは乖離した肉体についてと,それを作り上げる彼ら自身のアイデンティティ」「2,「伝統」と「現代」が混在した“相撲美”を表象する身体について」「3,われわれが相撲的身体に表象させたいことは何なのか」について考察する。 本年度は,文献と映像(NHKアーカイブスの映像資料を中心に)による調査,東京,大阪,名古屋,福岡の各本場所興行での力士の身体観察,相撲部屋の稽古での力士の身体観察,力士への聞き取り調査を通し,大相撲と力士の現状について把握した。その過程で,特に横綱柏戸の身体性に着目することが,本研究目的である1~3の議論を具体的に論述するために重要かつ必要であることがわかった。 これらの調査を通して,相撲がスポーツとしての合理的側面と神事・興行という非合理的側面の両方を保持していること,力士の身体は「見られる身体」として力士自身と彼をとりまく視線からアイデンティファイされることが明らかになった。また,メディアにおける相撲の表象はいくつかのパターンに分類できることも明らかになり,このパターンが相撲に期待されるものであることも明らかになった。 また,相撲を支える用具(たとえば稽古用まわしなど)の供給が困窮している現状について,関係者からの聞き取り調査で鮮明になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
文献調査,参与観察などおおむね順調に進展している。やや,相撲部屋へのアプローチが不足していると思われるが,長期休暇などを活用して進展させている。
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今後の研究の推進方策 |
文献と映像調査,興行・稽古の参与観察,聞き取り調査の継続のほか,横綱柏戸に関する資料収集と調査を深める。特に関係者への聞き取り調査を進める予定である。また,参与観察だけでなく,日本相撲協会の了承を得て協会所属の力士達へのアンケート調査を実施したい。具体的には幕内や幕下も含んだ力士あるいは力士養成員に対し,アンケート調査を実施したい。アンケート質問項目は、5件法で,力士的経験や身体への意識,他者からの視線など,本研究に関わる件について調査する予定であるが,事前調査などで質問内容は若干の変更の可能性もある。より広範囲な力士への調査が可能となればさらに有効なデータと結果が獲得できる予定である。そして,得られたデータを分析し,それまでに得られた質的データとの関連などを調査し,同時にその後のインタビューデータなどへフィードバックしていくために使用していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成26年2~3月の大阪場所における調査と資料収集予定が,研究代表者の母親急逝により一時中断したため。 柏戸調査のための出張,相撲部屋訪問出張,文献・映像資料の収集,アンケート調査準備等に使用予定。
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