本研究の目的は、グローバル化・少子高齢化の進展を背景に、①成人子世代における性別分業の変化は、親-成人子の世代関係にどのような影響を与えるか、②成人子世代における新しい分業と適合的な、親-成人子関係とはどのようなものか、③両者を支えていくための社会制度とはどのようなものか、について明らかにすることである。このために以下の研究を行った。 (1)分析:(1-1)親から成人子への援助:昨年は成人子から親という、成人子がイニシアティブをとる援助について分析し、夫婦の個人化傾向(男女とも、配偶者の親より自分の親を援助する)が見られることがわかった。今年度は逆方向の、親から成人子という、親がイニシアティブをとる援助について分析した。その結果、この方向の援助においては、個人化は見られず、女性が、夫方・妻方両方の親から援助を受ける傾向が、男性より強いことがわかった。この結果から、親族を維持するKin-keeperは妻の役割であり続けており、このような形で、親子関係という場面でも性別分業が維持されていることがわかった。(1-2)相続:相続について調査を行い、データの整理、自由記述のコーディング、基礎集計を行った。 (2)学会・研究会での報告:(2-1)成人子から親への援助について、上記の内容を国際学会で報告した。(2-2)親から成人子への援助について、上記の内容を国内の研究会で報告した。 (3)出版:(3-1)成人子の性別分業の変化やその特徴について、英文の図書に2つの章を寄稿した。(3-2)本研究の全体をまとめた本の執筆を行っており、近年中の出版を目指して作業を行っている。
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