研究期間中に、アイルランドの1821年、1841年、1851年、1901年、1911年の各年次のセンサスのデータベースを作成することができた。これは、世界で初めてのデータ化である。それにもとづき、研究代表者が提起した仮説、つまり、19世紀初期には、核家族システムによる核家族が優位であったが、1840年前後から直系家族システムにもとづく直系家族が優位になったという仮説を、それらのデータにより検証することができた。それは、世界で初めての研究成果である。とくに今年度は、1821年の残存するアイルランドセンサス個票によるデータベースにもとづき、そのデータ分析に集中した。その結果、研究代表者が提起した仮説、つまり、19世紀初頭のアイルランド家族が、核家族システムにもとづく核家族が優位であるという仮説をほぼ検証することができた。そして、この時期には、基本的に、核家族が優位であるものの、地域的に複合家族形態も認められた。それは、この時期以降に変化する直系家族への芽生えと解釈することができた。これまで、このデータのサンプルによる研究は認められるものの、全データ化による家族研究は、世界で初めての成果である。 第2に、2015年度以来イギリス、エセックス大学のUK Data Archveと継続協議してきたI-CeM(Integrated Census Microdata Prpject)のデータを2016年1月に入手することができた。そのデータは、イングランド・ウエールズにおける1851-1861年、1881-1911年の100%センサス原簿データとスコットランドにおける1851-1901年の100%センサス原簿データである。それらのデータは、各年度3000万人のデータで、イギリスにおけるアイルランド人移民研究に十分活用できるが、それらの分析は今後の課題である。
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