周辺労働力としての外国人技能実習生の受け入れ実態と移住労働者の主体性に関する研究

2016 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 25380728
• 研究機関: 広島国際学院大学
• 研究代表者: 崔 博憲 広島国際学院大学, 情報文化学部, 准教授 (60589373)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2018-03-31
• キーワード: 移住労働 / 外国人技能実習制度 / 周辺労働 / タイ / ラオス

研究実績の概要

文献や資料などの分析・検討については主に次の３点に注力した。①日本における外国人労働力の受け入れに関する法制度の改訂の動向を把握に努めた。②アジアにおける移住労働に関する情報やニュースを収集し分析を行った。③マイノリティという観点から外国人労働者の主体性・エージェンシーを理解するための理論的な枠組みの検討を行った。
調査については、継続してこれまで関係を維持してきたタイ人およびラオス人の技能実習生や帰国した元技能実習生とその家族、日本で技能実習生として働くことを希望するタイ人およびラオス人、タイおよびラオスの送り出し機関・リクルーターなどへの聞き取りを行った。主な調査地は、国内では近畿、四国、中国、九州、タイではバンコク、コンケーン、ウドンタニ―、チェンライ、ラオスではヴィエンチャンである。また、本年度は日本国内（近畿・中国・九州）で外国人労働者の支援活動を展開する組織・団体への聞き取りも行った。
文献資料やニュースなどの分析検討や聞き取り調査から、日本社会がこれまで以上に国外から周辺的な労働力を求めている実態、それとともに経済成長によって賃金格差が縮小してきたタイやラオスなどで日本のプレゼンスが変動しつつあることを具体的に把握することができた。また、技能実習生のような在留資格で働く外国人労働者を支援する団体・組織の実態や、その支援の社会的価値と界についても具体的に把握することができた。

現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定していた調査および研究はおおむね実行することができたが、研究開始時に想定していた以上に、日本における外国人労働力の受け入れに関する法制度が大きく改訂され、またアジアにおける移住労働の送り出しの動向が変化したことが把握された。そのため、それらの影響について、より分析が必要であると考えている。

今後の研究の推進方策

期間を1年延長することで、グローバルな労働市場の変動が日本に及ぼす影響や、大きく変化する日本の外国人労働力の受け入れにかかわる法制度の変化をいっそう精緻に分析し、また当事者であるタイ人・ラオス人技能実習生がどのように現代日本で働くという経験を捉えているのかを具体的に理解する。前年までに成果にこの理解を加えて、研究全体の成果の社会化を目指す。

次年度使用額が生じた理由

当初の計画を効率的に進めたことで節約した経費が生じた。

次年度使用額の使用計画

外国人技能実習制度の拡大的運用や農業分野での新たな外国人労働者の受け入れといった現在進行している日本の周辺的労働市場いおける外国人労働力の再編をより精緻に考察するための追加の調査と分析を行いたい。