研究課題/領域番号 |
25380729
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研究機関 | 熊本学園大学 |
研究代表者 |
藤本 延啓 熊本学園大学, 社会福祉学部, 講師 (60461620)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ライフヒストリー / 問題 / 被害 / 当事者性 |
研究実績の概要 |
今年度は、研究成果の中間的な報告として、本研究が学術的に依拠する専門分野である社会学系の学会(西日本社会学会)にて研究発表を行い、収集データすなわち豊島住民におけるライフヒストリーの整理・分析、あわせて関連文献の収集・検討に注力した。 廃棄物問題を社会学的に解釈する目的でよく使用されてきた、社会学における既存のフレームワーク(例えば「受益圏-受苦圏論」など)は、ミクロレベルの差異をひとくくりにすることによって「切れ味」を実現させている一方で、不法投棄事案においては、その「受苦圏」に内包される主体各々の「問題」「被害」が多様であることから、既存のフレームワークでは個別の「問題」「被害」の潜在化、放置の結果につながる可能性は、昨年度の報告で既に指摘したとおりであり、今年度は、これらの問題関心に沿った研究活動を展開した。 住民の発話を丁寧に見ていくと、一部の住民には、いわゆる「環境意識」によって住民運動に参加したというより、いわば「地域行事」として参加したという傾向に気づき、さらに、現在における「幸せ」あるいは「生きがい」とも呼ぶべき感覚へ直結している様子もうかがえる。言い換えれば、少なくとも個人レベルのライフヒストリーの語りにおいては、豊島事件に対する「問題」も「被害」も強くはあらわれないということである。そこには、「問題」「被害」に対する「当事者性」の観点が重要視できるのであり、この点に留意して、ライフヒストリーの再検討を進め、現在も継続中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究調書においては「研究目的を達成する方法として、豊島不法投棄事件にかわる社会史を①事件史②個人史③地域史④外部史にわけて整理していく」としたが、先述したように、今年度では、昨年度に引き続き、ライフヒストリーの収集と分析、および新たなフレームワーク構築に向けた検討・考察を主に行い、あわせて文献収集に注力した。 個人史調査、分析と研究目的に向けたフレームワーク構築についてはほぼ順調に進展しており、研究調書における「研究目的」で述べた「不法投棄事件について地域社会における住民の『問題』認識を明らかにし、さらにその『解決』まで視野に入れた分析が可能な理論構築をめざすことにある」に照らせば、おおむね順調に研究が進展しているものと評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は最終年度に当たることから、本研究の目的である「不法投棄事件について地域社会における住民の『問題』認識を明らかにし、さらにその『解決』まで視野に入れた分析が可能な理論構築」について具体的な成果を出すことに注力したい。 研究目的に照らせば、研究調書で述べた「社会史の整理」における「個人史」が最重要であることが、これまで3年間の研究を通して明らかになってきている。必要に応じて「事件史」「地域史」および「外部史」も整理しながら、「個人史」に関する調査・分析をより深化させることが、先に述べた研究成果の達成に利するものと考える
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたよりも旅費使用額が小さくなったことが主な原因である
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次年度使用額の使用計画 |
研究が進展する中で、当初計画に比べ、調査成果の分析により労力を割く必要があると判断している。関連するデータ整理など、人件費・謝金にかかる費用の相対的な増加が見込まれ、これによって「次年度使用額」を使用する
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