介護保険導入直後の2000-2001年、東京近郊A市2地区(新興住宅地区、農村地区)における一般介護選択(実親、義理の親が要介護状態となった時、どちらの介護形態(自宅介護、施設介護)を選択するのがよいと思うか)および主体的介護選択(実母、義母が要介護状態になり、主介護者になる場合、どちらの選択をするか)について関連要因を分析した。調査対象は2地区在住の30代女性である。14 年後、介護が身近な問題となった対象者にパネル調査を実施し、14年間における介護選択の変化、関連要因(愛情、扶養義務感)の変化について比較分析を行い、介護者に対する適切な支援策の立案に寄与することを目的とした。 パネル調査の結果、実の親、義理の親に対する一般介護選択、主体的介護選択共に2地区とも自宅介護率が低下傾向にあった。農村地区の義理の親に対する一般介護選択における自宅介護選択率は41.7ポイントの大幅な低下を示した。また、実母、義母に対する愛情および扶養義務感は2地区とも低下した。 農村地区における義理の親に対する一般介護選択では、自宅介護率が大幅に低下したにも関わらず、義母に対する主体的介護選択では変化がなく、66.7%と高い数値を示した。自宅介護を望んでいないにも関わらず、現実には介護をせざるを得ない環境にいる嫁の現状が反映されている。義母に対する愛情や扶養義務感も低下している中、介護せざるを得ない状況を避けるためには、家庭内の問題として抱え込まず、地域包括支援センター等に助言を求め、介護サービスに対する情報を積極的に取得する等、介護選択に対する準備と覚悟が問われている。 支援策として2016年、農村地区で介護者同士話し合う場を包括支援センターと設け、活動を続けている。今年は市役所主催により、本研究のまとめとして介護について考えるシンポジウムを実施、一人で抱え込まない介護を提案する。
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