知的障害、精神疾患を抱える受刑者を対象とした日本初の市民参加による訪問型イヌ介在プログラムを発展させ、社会復帰のための更生教育におけるイヌとのふれあいが、受刑者のストレス、感情やコミュニケーションスキルに与える影響を検証し、プログラムの構造を明らかにすることが、本研究の全体の目的である。質問紙調査の内容は、クール前後の対象者のストレス反応と自尊心の測定、毎回の実践のセッション前後の気分測定、毎回のセッション後の自己評定、ハンドラーによる行動評定である。同時に、実践側への福祉的配慮として、毎回の実践後にイヌの行動評定とハンドラーのストレス自己評価も実施し、過度な負担がかからないようにプログラムのモニタリングを行なった。 プログラムの改良(記録、実践チームの技能向上を含む)は円滑に行なうことができた。そして、この実践が受刑者と実践者に与えた影響(効果)を量的、質的の両面から検証した。プログラムは、対象者自身および実践者によって心理社会的効果があると評価された。一方で、限られた実践期間、場面のためか、その経時的効果に関しては予想していたほどの成果は得られなかった。そもそも持続的に支援を提供する必要があるためなのか、支援内容のさらなる技術的な改善によって解決できるのかは検討していく余地がある。また、プログラムを構成する各要素の司法福祉における臨床的意義を考察した。これらは、国際学会で発表するとともに、報告書にまとめることで、内外の関係者と成果を共有することができた。
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