本研究では、介護老人保健施設に入所する要介護高齢者の基本動作能力別の福祉用具使用による自立支援の効果を明らかにし、施設での福祉用具貸与の必要性を裏付けることを目的とした。交付申請時には、平成27年度は、25年度、26年度の研究結果を基に、施設での福祉用具の必要性を裏付け、貸与の方向性を検討することを目的とした。 研究成果の具体的内容としては、平成25年度は、施設において導入の必要性の高いADL項目と福祉用具を示した。また、介護老人保健施設の要介護高齢者10名を対象に、基本動作能力別の福祉用具・ADL介助方法の分類に基づき福祉用具を選定し、福祉用具の使用による自立支援の効果を示すとともに、研究を進める上での課題を見出した。平成26年度は、平成25年度の結果の分析と課題解決を図るとともに、対象者数を増やせるよう施設開拓を行った。平成27年度は、新たに介護老人保健施設の要介護高齢者6名と介護職員41名のデータを得ることができた。研究で得られた成果の一部については、講義などで活用した。研究論文としては、各統計手法を用いて分析中であり、論文投稿に向けた準備が進行中である。 本研究の重要性としては、一つには対象者の能力の活用を、基本動作能力別の福祉用具・ADL介助方法の分類に基づき行う手法を示したことである。2つめには、能力に基づいた福祉用具の選定と介助方法が、対象者の能力を活かし、自立への効果を示唆したことである。本研究は、対象者の能力を活かし自立支援を求められる介護老人保健施設において、個人の能力に応じた福祉用具の必要性を裏付け、そして、貸与の方向性を検討する一つの情報として意義があると考える。
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