研究課題/領域番号 |
25380745
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研究機関 | 福井県立大学 |
研究代表者 |
舟木 紳介 福井県立大学, 看護福祉学部, 講師 (50315842)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | デジタルメディア / 多文化ソーシャルワーク / デジタルストーリーテリング / オーストラリア / 移民 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、文献調査に加えて、2014年5月に「第12回市民メディア全国交流集会 三河メディフェス2014」に参加し、日本国内でデジタルストーリーテリングを障害者や外国人若者といった社会的マイノリティへのメディア実践で活用している研究者らと、福井での海外にルーツを持つ若者を対象とした「ダイバーシティデジタルメディア(DDM)プロジェクト」への助言および協力に関する建設的な議論を行うことができた。2014年7月にオーストラリア・シドニーにおいてデジタルメディアを活用した外国にルーツを持つ若者への支援活動の先進的事例に関するインタビュー調査の継続調査を実施し、多文化ソーシャルワークの実践研究の課題に関する聞き取りを実施した。2014年9月には、福井県内において、デジタルストーリーテリング・ワークショップ実践の展開を進めるために、ファシリテーター養成を目的とした「支援者のためのデジタルストーリーテリング・ワークショップ」を実施した。調査結果に関しては成果の一部を国際学会および国際シンポジウムで発表した。2015年1月には、海外にルーツを持つ支援者による主体的な映像メディア制作を目的とした「外国人支援のためのデジタルストーリーテリング・ワークショップ」を実施した。さらに、これまでDDMプロジェクトに参加してきた外国人参加者らへのインタビュー調査を実施した。インタビュー結果の分析を通じて、ソーシャルワーク実践におけるデジタルストーリーテリングの活用の課題としては、簡潔に完全に結論付けるようなストーリーを基本とする西欧的なデジタルストーリーテリングが「非西欧」社会である日本における実践では地域社会において受容されない可能性があるという倫理的な課題が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度に予定していたデジタルメディア創作ワークショップの実施と参与観察については、宿泊型のワークショップではなく、外国人住民が参加しやすいiPadといったタブレット型端末によるデジタルストーリーテリングの手法による単発的ワークショップを実施し、研究計画はおおむね達成された。また、研究成果を地域社会に広く還元するためにも、ソーシャルワーカー、国際交流協会といった外国人支援分野の職員、地域の外国人若者や子どもを支援している外国人当事者のデジタルメディア実践のスキルアップを目的とした「支援者のためのデジタルストーリーテリング・ワークショップ」を複数回実施した。このワークショップ研修を経験することで、ワークショップへの参加者が、新たにそれぞれの支援の現場でファシリテーターとしてデジタルメディアを活用する技術を取得できることが検証できた。調査結果の分析の一部をThe First International Conference of the Australian Studies of Japan(Tokyo, 2014年7月)、国際シンポジウム「デジタルストーリーテリングの可能性」(Nagoya, 2014年11月)にて演題発表した。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、これまでの研究成果の総括および国内外の研究者や実践者との研究交流を通じて、新たな多文化ソーシャルワークの実践モデルを開発することを目標としている。2015年7月にシンガポールで開催される19th International Symposium of the International Consortium for Social Developmentにおいて、これまでの研究成果に関する演題発表を予定し、アジア地域で移民支援に関わる調査を行っている研究者との交流を予定している。また、昨年度の研究成果を活かして、新たな多文化ソーシャルワークのモデルプログラムを開発し、国内研究協力者と共同して、タブレット型端末やパソコンを活用した「デジタルメディア創作ワークショップ」を外国人住民を対象に実践し、それらの作品をこれまでのデジタル作品と併せて、福祉や教育に関わる実践者・支援者に公開する上映会を開催する。それらの作品公開を通じて、コミュニティアートおよび文化開発の手法を取り入れた多文化ソーシャルワークの新たな実践方法の開拓につなげる。加えて、モデルプログラム開発にあたって、近年オーストラリアで実践されている移民向けのコミュニティアートおよび文化開発の手法を追加現地調査を行い、新たな支援手法についての情報収集を行い、今後の研究の方向性を探る。
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度予定していた宿泊型の「デジタルメディア創作ワークショップ」を単日型のワークショップに変更し、海外調査についても期間を短縮した。
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次年度使用額の使用計画 |
モデルプログラム開発に向けて、近年オーストラリアで実践されている移民向けのコミュニティアートおよび文化開発の手法を追加現地調査を実施する予定である。
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