研究実績の概要 |
平成23年度から,発達障害のある小学生の母親(調査協力者)に対し年1回の頻度で放課後生活に関するインタビュー調査を実施してきた.インタビュー実施年度毎に,その時期に福祉・特別支援教育分野における話題が母親から語られ,子どもの生活に少なからず反映されている.大きく反映した話題の一つは治療薬使用であり,インタビュー開始当時と比べ,現在,母親にとって治療薬は身近な存在となっていることが示唆された.治療薬については,発達障害に関する研修会,我が子と似た特性を示す子どもの母親とのやりとり,インターネットや書籍等のメディアを通して治療薬に関する情報を得ていた.そして,発現した「問題行動」をきっかけに学校教員等から提案される場合もあれば, 学習への集中力向上,さらには予防的に学校の人間関係における葛藤回避のため使用を検討していることが示された.治療薬使用は教科教育や学校行事といった学校教育のプログラムを軸に調整され,週末や長期休暇といった放課後の時間は休薬期間に充てられていた.改めて,母親は学校時間を重視し子どもの生活を組み立てており,また,学校生活と放課後生活は相補的な関係ではなく,学校生活をよりよく過ごすために放課後生活が補足する関係にあることが認められた.なお,母親が治療薬の使用を検討する背景に,学校を中心とする社会の障害特性に対する寛容性が関係することが示唆された. 調査協力者の子どもの中には,小学校から中学校に進学した者もいる. 今後は,学校環境や,子どもの成長もあいまって,放課後生活がどのように変化したのか,そして,これまで経験した放課後活動の子ども・母親にとっての意味についてインタビューデータの分析を行う.
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