研究課題/領域番号 |
25380756
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 山口県立大学 |
研究代表者 |
坂本 俊彦 山口県立大学, 附属地域共生センター, 教授 (40342315)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 地域包括ケアシステム / インフォーマルケアシステム |
研究概要 |
本研究は、地方中小自治体における「インフォーマルケアシステム(ICS)」構築促進を目的とし、先行事例の比較によってその構築支援方法を整理するものである。研究初年度は、ICS構築を事業内容に含む厚生労働省「安心生活創造事業(平成21~23年)」モデル6自治体を対象とし、「ICS構築支援主体」(行政/社協等)担当者対象聞き取り調査及び関連資料の収集を行うとともに、「ICS構築実施主体」(地区社協、地域づくり団体、自治会、老人会、民生委員等の地域活動団体/実践者)に対する聞き取り調査を行い、ICS構築の現状と課題について整理した。 研究によって得た主な知見は下記の通りである。①高齢独居/夫婦のみ世帯の増加著しい地区の「地域住民」は、その多くが、高齢期における生活課題の深刻化に不安を感じているが、自身がICSの「活動主体」あるいは「活動対象」であるという認識を持つに至っていない。②「地域住民」の活動支持度及び活動参加度が「地域活動団体/実践者」の活動意欲に大きな影響を与えることから、ICSの構築/維持の段階毎に地域住民対象「意識啓発」事業を展開する必要がある。③「意識啓発」手法としては、単発的な「講演会」のみならず一定時間数の受講を要件とする「研修会」を開催し、受講者が受講後の実践活動をイメージできるプログラムを準備すべきである。④③のような実践志向型意識啓発事業においては、「地域活動団体」と「ICS構築支援主体」の連携が不可欠であり役割分担について十分な協議が必要である。⑤「地域活動団体/実践者」の多くはICSに対する理解及びノウハウの蓄積が不十分であるため、「ICS構築支援主体」によるICS構築支援の取り組みが必要である。⑥これらの取り組みは「地域活動団体/実践者」と「ICS構築支援主体」との信頼関係を前提とするものであり、後者には平時より信頼関係構築・維持の努力が必要である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、地方中小自治体における「インフォーマルケアシステム(ICS)」構築の促進を実践上の目的とし、そのための支援方法の整理を研究上の目的とするものである。 これを達成するために、初年度は、ICS構築の現状と課題を把握することに焦点を絞り、6自治体の行政、社協担当者ならびに活動実践者に対する聞き取り調査を行った。そしてその結果として、ICS構築の現段階においては、ICS3システム(「課題発見システム」「課題検討システム」「課題解決システム」)構築の前段階として、その担い手となる「実践者」を育成・支援するとともにICSに対する「地域住民」の意識変容を促すことが実践上の課題となっていることが明らかとなった。以上のように、当初の計画通り、現状把握のための聞き取り調査を実施し、ICS構築支援の現状と課題について整理できたことから、初年度の段階としては「おおむね順調に進展している」と判断される。 なお、「地域住民」は、年齢、性別、世帯、職業その他において多様であり、その意識変容を図るためには、多様性に応じたきめ細かな取り組みが必要となる。初年度は、当初の計画どおりではあるが、行政、社協といった「ICS構築支援主体」ならびに「地域活動団体/実践者」に対する聞き取り調査に留まったため、「地域住民の多様性」について検討するだけの情報を収集しておらず、これを踏まえた支援方法を整理するには至っていない。そこで次年度は、当初の計画通り、特定の地域属性に限定した地域住民を対象とする質問紙調査によって情報を収集し、「実践者」の育成・支援ならびに「地域住民」の意識変容を図る支援方法について整理してみたい。
|
今後の研究の推進方策 |
研究第2年度は、当初の計画通り、特定の地域及び属性に限定した住民を対象とする質問紙調査データの分析によってICS構築の観点から地域住民の類型を行い、これを踏まえて「実践者」の育成・支援ならびに「地域住民」の意識変容を図る支援方法について整理する。 (1)調査票の作成:研究初年度の成果を踏まえ、調査票の作成を行う。調査項目としては、回答者の「基本属性」「生活意識」「相互扶助慣行」ならびにICSに対する認知・評価・参加意欲・参加経験、参加による主観的効果、活動内容に対する期待と評価などを予定している。 (2)調査対象地域/対象者の選定:調査対象地域/対象者の選定を行う。調査対象者としては、平成25年度に聞き取り調査対象とした自治体から、研究目的に照らして適切と考えられる小中学校区レベルの地区に在住する住民約2,000人を予定しているが、調査協力を仰ぐ関係団体・機関の要望にも柔軟に対応する予定である。 (3) 調査方法の確定と質問紙調査の実施:配票・回収方法としては郵送による配布・回収を予定しているが、これについても調査協力団体・機関と協議のうえ、柔軟に対応する予定である。 (4)調査結果の分析と支援方法の整理:調査データの分析によってICSに対する地域住民の評価、期待及び参加意欲の現状を明らかにし、これをもとに、「実践者」の育成・支援ならびに「地域住民」の意識変容を図る支援方法について整理する予定である。 (5)(1)~(4)と並行し、可能な範囲で先進事例の把握に努め、研究最終年度の主要課題であるICS3システム(「課題発見システム」「課題検討システム」「課題解決システム」)構築に関する支援方法の検討にも着手したいと考えている。
|