研究課題/領域番号 |
25380759
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
佐藤 園美 北海道医療大学, 看護福祉学部, 准教授 (10387417)
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研究分担者 |
向谷地 生良 北海道医療大学, 看護福祉学部, 教授 (00364266)
奥田 かおり 北海道医療大学, 看護福祉学部, 講師 (40632609)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 精神保健福祉 / 当事者研究 / 演習プログラム |
研究実績の概要 |
本研究は、自己観察を行う方法として当事者研究が有効であるかの検証を行いながら、当事者研究を用いた新たな演習プログラムを開発することを目的としたものである。 初年度は、精神保健福祉コースの対象学生(2年生)23名に対して、当事者研究とはどういうものか、なぜ演習で当事者研究を行おうとしているのかの理解を促す授業を行った。その内容を踏まえ、平成26年度は対象学生(3年生)23名に実際の当事者研究を取り入れた授業プログラムを実施した。具体的な授業内容は以下の通りである。(1)学生が自分自身について現在困っている事(事象)のアセスメントシートを記入(2)希望する学生の当事者研究をアセスメントシートに基づいてクラス全体で行う(3回)(3)7~8人の小グループに分かれ、全員が当事者研究を行う(ファシリテーターとして、当事者研究の経験者を各グループに1~2名配置)(4)小グループの内容をクラス全体で分かち合う。プログラム終了後、学生にセルフレポートを書かせると共に、マインドフルネス、セルフ・モニタリング尺度、自己肯定意識尺度の3つの心理検査を実施した。 また、昨年度行った当事者研究の経験者に対するフォーカスグループインタビューを分析した結果、当事者研究による自己変化のキーワードとして「仲間との出会い」「つながり(自己と他者)の回復」「生きやすくなる」「自分を助ける方法」「自分への気づき」「経験の有意味性」の6つが明らかとなり、これらの6つのカテゴリーのダイナミズムとして,2つの循環「経験の有意味性の循環」「生きやすさの循環」があることが分かった。 つまり当事者は当事者研究を行うことで、自己観察と自己変革の循環を繰り返しながら、当事者自身が抱える課題に対処する能力を高めていることになる。今回の調査から、学生が自己観察を深める実践的な方法としての当事者研究の可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、当事者研究を用いた演習プログラムについてその内容(頻度、時期、グループの人数、具体的な構成等)を検討し、初年度の授業内容を踏まえ、対象学生23名に対してその演習プログラム(通年)を実際に行った。 また、演習プログラムを行う前後で学生にセルフレポートを書かせ、心理検査(マインドフルネス、セルフ・モニタリング尺度、自己肯定意識尺度)を実施した。現在それらのデータを分析し、当事者研究を用いた演習プログラムが学生にとってどのような意味があったのかについて考察中である。 昨年度実施した当事者研究の経験者に対するフォーカスグループインタビューから、当事者は当事者研究を行うことで、自己観察と自己変革の循環を繰り返しながら、当事者自身が抱える課題に対処する能力を高めていることが明らかになったためその結果を公表(学会発表)した。考察では、この調査結果から、学生の自己観察を促す方法としての当事者研究の可能性についても述べた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は(1)当事者研究を用いた演習プログラムの継続と具体的方法(頻度・時期・グループの人数等)の修正(2)学生のセルフレポートと心理検査の分析を行い、当事者研究が学生の自己観察力を促進するのに有効であるかの検証を重ねて行く。 研究の結果については学会等で報告する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成25年度に実施したフォーカスグループインタビューの分析結果は予定通りJoint World Conference on Social Work, Education and Social Developmentで発表したが、演習プログラムの実施が当初の予定より1年遅くなったため、その結果について国内学会等で報告できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
当事者研究を用いた演習プログラムを実施する費用及び授業インストラクター(当事者研究の経験者)への謝金および交通費。学生のセルフレポート、心理検査のデータ入力謝金および交通費。 演習プログラムを実施した結果報告を国内の学会等で行う。
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