最終年度の研究成果として、第一に、特別養護老人ホームAおよびBにて外国人介護福祉士受け入れに関する聞き取り調査を実施した。経済連携協定にもとづく外国人介護福祉士候補生の受け入れについて長年の実績がある特養Aについては、現在勤務している者や昨年度までに退職した者、再来日を果たし再び契約予定の者、新しく受け入れる予定の者等、それぞれの状況に応じて関係者への聞き取りを実施した。受け入れを開始したばかりの特養Bに関しては、初めての現地訪問および関係者への聞き取り調査を実施し、受け入れの経緯や今後の課題についてデータを収集した。第二に、送り出し国の状況を明らかにするため、インドネシアでの調査を実施した。バリ島シガラジャの看護専門学校を訪問し、日本語教育の現状について情報を入手した。またキンタマニの外国人技能実習生の送り出し機関を訪問し、介護分野における技能実習生の送り出しの現状を視察し、聞き取り調査を実施した。第三に、外国人介護福祉士候補者の国家資格取得のための日本語教育に関して関係諸機関から情報を入手するとともに、自らも特養Aにおいて日本語教育支援を実施し、その成果や問題点について論文にまとめて発表した。 研究期間全体としては、特養における職員配置の多様性を明らかにするため、主婦層であるパート職員および外国人介護福祉士に焦点をあてた質的調査を進めることができた。正規職員と同様の業務内容をおこない同様の待遇を受けている彼らと、受け入れ側の事業所および関係職員への聞き取りをおこない、彼らがいかに介護技術を学び施設に特有のケア文化を吸収しているか、入居者とどのような関係性を形成し、職員集団のなかでどのような役割を果たしているかを解明することができた。
|