研究課題/領域番号 |
25380771
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
宮本 悟 中央大学, 経済学部, 教授 (70352846)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フランス / 社会保障 / 社会手当 / 家庭内保育 |
研究概要 |
研究計画の第1段階にあたる本年度は、フランスにおける認定保育ママ制度の利用に欠かせない家族給付制度の特徴を明らかにするために、その歴史・現状に関する検討・分析を行った。具体的には、19世紀後半に特定職場内の個別賃金に上乗せする形で家族手当が官民両部門において徐々に拡大していった時期から、社会保障の枠組みの中に再編された今日の家族給付制度(レジーム)に至る歴史的展開および現状を考察することで、家庭内保育制度をはじめとする子育て支援システムの利用を経済的に下支えするフランス家族給付制度の3つの特徴に触れることができた。 第1の特徴は、家族給付財源における雇主拠出の位置づけが重視されている点である。家族給付の雇主拠出率はかつての16.75%(1951年)から現在の5.25%(2014年)へと引下げられてはいるが、雇主拠出を主な財源に据え家族給付制度を運営していく姿勢自体はなおも引き継がれている。 第2の特徴は、家族手当の普遍性を堅持している点である。家族給付制度の基礎部分に普遍主義的性格の家族手当を据え、その上に、認定保育ママの利用を含む多様なニーズに応じた諸手当を幾層にも重ねているかのような重層的な給付体系も特徴的と言えよう。 第3の特徴は、重層的な給付体系に見合った規模の予算を確保している点である。例えば2011年度には、家族手当など「家族のための扶養給付」に約168億2100万ユーロ、家庭内保育制度の利用を支援する保育方法自由選択補足手当を含む「乳幼児のための給付」に約127億5700万ユーロが充てられた。両者を合わせた「家族を直接支える給付」(住宅関連諸手当・年金拠出金免除などを除く)は、GDPの約1. 48%に相当する。 今年度の主要な研究成果は、『中央大学経済研究所研究叢書 62』(2014年刊行予定)所収の拙稿に取りまとめられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、認定保育ママ制度の利用に欠かせない家族給付制度の特徴を考察することに注力した。その反面、当初の研究計画で重視していた、認定保育ママ制度そのものの形成過程に関する分析を取りまとめるには至らなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、認定保育ママ制度の歴史的検討を継続しつつ、認定保育ママの労働実態に関する調査・分析を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究は、当初、認定保育ママ制度そのものの形成過程に関する分析を取りまとめる計画であったが、適切な史料・書籍の入手が困難であった。そのため、書籍購入費・資料整理のための人件費などについて未使用部分が残された。 認定保育ママ制度そのものの歴史的検討を継続し、適切な史料・書籍の購入を進める。また、研究効率を高めるために、資料整理を部分的に業者委託する予定である。 次年度の研究としては、認定保育ママの労働実態に関する調査・分析を計画しており、文献研究の他に現地調査(パリ市、平成26年9月1日~5日)も実施する予定である。
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