研究課題/領域番号 |
25380771
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研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
宮本 悟 中央大学, 経済学部, 教授 (70352846)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | フランス / 社会保障 / 社会手当 / 家庭内保育 |
研究実績の概要 |
本年度は、継続課題としていたフランス認定保育ママ制度の形成過程に関する分析を中心に、研究を進めた。当初、フランス家庭内保育制度の歴史に関する適切な文献の入手は困難であったものの、平成26年8月28日~9月7日に実施した現地調査・研究交流により貴重な資料・情報を得ることができた。得られた知見の概略を示せば、下記の通りとなる。 1.フランス認定保育ママassistante maternelleの歴史的先例としては、育児に関する人的サービスを担っていた乳母nourriceや子守gardienne d’enfantsがある。例えば、中世におけるブルジョワ階級の女性には「妻」としての立場が重視され、子の授乳は下層階級の出である乳母の役目とされた。 2.乳母に関する初期の法規制は、19世紀後半に確認できる。すなわち高い乳児死亡率を背景に、1874年、2歳未満児の生命と健康を守る目的で乳母の義務を定めたルーセル法Loi Rousselが成立している。 3.20世紀に入ると、低温殺菌法によって開発された人工乳が広く利用されるようになり、乳母の活用は減少していく。死亡率の引下げが社会的課題となった第二次大戦後には、母子保護施設Protection Maternelle Infantileが設置され、乳母に対する公的監督体制が整備される。他方、乳母に求められる育児上の役割は拡充していき、1977年には保育ママの認定資格制度が法制化される。1992年、保育機能をさらに充実させるべく保育ママの認定システム見直しが行われる一方で、認定保育ママの労働条件整備も実施された。 現地で得た資料・情報については、これまでの研究を踏まえつつ論文として取りまとめ、『白門』(中央大学、2015年刊行予定)にて公表する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、認定保育ママ制度の形成過程に関する分析を中心課題としていた。現地調査の効果によって多くの資料・情報を入手できたため、論文の作成はおおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
3年計画の最後にあたる平成27年度は、認定保育ママ制度に関する国民的評価を中心に考察を加え、総括を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は現地調査を実施したものの、その際、インタビューを予定していた一部の研究者・労働者への面会が叶わなかったため、謝金や史料・書籍購入費などについて未使用部分が残された。
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次年度使用額の使用計画 |
認定保育ママの労働実態や同制度にたいする国民的評価を考察するにあたって、さらに多くの関連情報を収集する必要がある。そのため、再度の現地調査(パリ市、平成27年8月10日~14日)を実施する予定である。
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